はじめに
この記事は自作シナリオ「六等星の祈り -Dreaming,Dreamin-」を自PCでやったらどうなるかという妄想を形にしたリプレイ風ノベルです。
以下の点に注意して読み進めてください。
・シナリオ「六等星の祈り -Dreaming,Dreamin-」のネタバレを含みます。
・上記シナリオには記載されていない描写が含まれます。
・シナリオ筆者によるハーベストの解釈を基にした、独自設定が含まれます(例:カース特別対策委員会に所属している生徒の人数、魔法学園ハーベストの入学式の日など)。
・このノベルの結末は、登場人物全員が幸福になるハッピーエンドではありません。あらかじめ言っておきます。
・PC3とその妹による前日譚も投稿済みですが、こちらは読んでも読まなくても支障ありません。あくまでもこのノベルが書かれるきっかけをフレーバーに絡めただけのものですので。
今回予告
初めは、暗闇と静寂だった。何一つない星空に、小さな光がともる。
光に手を伸ばしても、つかむことができない。つかんだ気になっても、どこかへ消えてしまう。
「どうか、おいていかないで」
悲痛な声は、気まぐれな神様に届いた。神様は、その声をこう捉えた。
「嫌でも届くように、その声を大きくしてあげましょう!」
魔法学園RPGハーベスト「六等星の祈り -Dreaming,Dreamin-」
魔法の時間は、まだ終わらない。
シナリオハンドアウト/登場PC紹介
(NPCの紹介はシナリオページを参照ください)
(PC名のリンクはクリックするとHPに掲載されているキャラ紹介記事に飛びます)
PC1:花槍パトラ(はなやり ー) コネクション/八岳フジ 推奨関係:
キミは、ハーベストに入学したばかりの新入生だ。ある日キミは、魔導登山サークルに加入している少女「八岳フジ」から、サークルへの勧誘を受けた。彼女はキミをサークルに加入させようと、登山の魅力をアピールしてくる。そんな折、彼女の喉に一つの異変が起きた。
PC2:ラビリ・ワンダー コネクション/愛咲明日翔 推奨関係:
キミは頻繁に、愛咲明日翔という女子生徒に絡まれている。彼女曰く「驚く反応が面白くて、つい」とのこと。ある日見かけた彼女は、珍しく落ち込んでいた。なんでも、自分の悪戯よりも驚く出来事があったそうだ。彼女に頼まれ、キミはその出来事の解決に乗り出すことになった。
PC3:リンネ・リーインカーネーション コネクション/イマヌエル・カント 推奨関係:
キミは魔法学園ハーベストのカース特別対策委員会に所属している。ある日、学園の一部の生徒で広まっている「声に関するトラブル」について、カースに感染した生徒によるものだと推測したカント先生に呼び出された君は、原因究明と解決を命じられた。今のところ大きな騒動でもないのだが、カント先生は放置した場合の「良からぬ未来」を気にしているらしい。キミはその良からぬ未来を変えるために、迅速な解決へと足を踏み出した。
PC4:浪波カレン(なみわ ー) コネクション/斉彬リリア 推奨関係:友人、後輩 指定学年:2年以上
キミはかつて、ハーベストに来たばかりの「斉彬リリア」という少女を助けたことがきっかけで、彼女に慕われていた。そんな彼女がある日、「黒き森に行ってきます」という手紙を遺して、姿を見せなくなった。心配になったキミは、黒き森から聞こえる彼女らしき人物の大声を頼りに、捜索を始めるのだった。
花槍パトラ:現実世界から魔導次元にやってきた女性。年齢は二十二歳であり、今シナリオ中の新入生の中では高齢の部類に入る。
機械に関する知識が豊富であるが、「大魔法で神様と契約なんてすごいに決まってます!」という子供みたいな理由で杖魔導学科の所属を選んだ。
現実世界に血のつながった妹を残しているが、あの子なら大丈夫だろうと楽観視している。
ラビリ・ワンダー:魔導次元生まれ魔導次元育ちの十八歳少女。
幼馴染をクリーチャーにより喪った過去と決別したような振る舞いをするけれど、奥底に秘めた復讐心が顔を出していることに気付かない。
ヒーローに憧れて変身魔導学科を目指していたが、先輩や同級生の語るヒーロー像と自身の目指すものの違いに居心地の悪さを感じて紋章魔導学科に所属した。
リンネ・リーインカーネーション:魔導次元の名家「リーインカーネーション家」の長女を騙る十六歳。このノベル内で唯一の男性PC(格好は女性ものだが)。
というのも、彼の生まれは短命なものが多く、長寿繁栄を目指すため異性装をするように義務付けられているのだ。彼はそれを利用してとある「イタズラ」をしているが、その腕前は親族の教育もあり初対面ではそう簡単に見抜けないほど。
お転婆な気質と裏腹に魔導書魔導学科に所属しているのは「変な女から渡された本を無くさないようにするため」という不思議な理由から。
浪波カレン:パトラ同様、一年前に現実世界から魔導次元にやってきた少女。シナリオ内で一年生から二年生に進級する十六歳。
困っている人は放っておけない気質だが、面倒ごとには巻き込まれたくないという考えも。成績はAランクとかなりの優等生。どんな話題にも答えるが、一つだけ地雷となるものがあるようで……?
札魔導学科を選んだ理由は「なんとなく」とのこと。
Prologue「全ての始まり」
まるで、鏡がそこにあるかのようだった。
黒髪の少女は、自身と同じように……いや、それ以上に驚く目の前の人物の姿に困惑していた。なにせ、多少の差異はあれどその人物は自身と瓜二つなのだから。
「あ…………っ、……」
目の前の彼女は何かを言いかけ、目に大粒の涙を浮かべては立ち上がり……そして、森の外へ続く道を走る。
「ま、待って!!」
少女もそれに続く。右手に大切なものをしっかり握って。彼女は後方確認をし、そして右手のものに気づいて更に逃げる。
追いかけては、逃げられる。そんな二人の終着点が、森の外から顔を出す。
物語に出てきそうな、お城のような場所……「魔法学園ハーベスト」。その建物に、二人は駆け込んだ。これから何が起きるかも、知らぬままに。
Chapter1「新入りの法則」
時は少し遡り、三月後半。明確な日付は覚えていないが、少なくとも二人の少女が森の中で邂逅する前のこと。
一人の少女が、魔法学園ハーベストの西に位置する「黒き森」にて小型クリーチャーの討伐をしていた。
「毒に蝕まれ、四肢の自由を失い、朽ちる未来を待つ。それがあなたに遺された未来図よ」
オレンジ色の花が張り付けられた栞を構え、彼女は無慈悲にそう告げる。
「冷酷だなんて、思わないことね。……【ハイドレンジア】」
そして、今では失われた得意魔法ーー現在から二年前の出来事なので、覚えている魔法にも多少の差異が発生している。もちろん、当人たちの性格にもーーを詠唱し、とどめをさした。
「…………これで依頼は完了。フリードに報告しないと……」
『もしもし?フリードです』
「こちらHSN(ハンターズソーシャルネットワーク)所属の浪波カレン。依頼された任務が終わったから、その報告」
『あぁ、了解。……毎度思うんだけど、キミ本当に一年生?』
「……どういうこと?」
『僕が言うのもなんだけれど……魔法の覚えが早くて、しかも防御魔法を得意としていながら、基本ソロで活動していて……それでもしっかり依頼をこなす。これって、なかなか凄いことなんだよ』
「その結果がAランクでしょう」
少女の……浪波カレンの口からため息が一つこぼれる。それに対し、電話越しの若き生徒会長……フリード・フィリップスは『ごめん、馬鹿にしたつもりじゃないんだ』と謝る。
『とにかく、無事でよかった。学園に帰るまでが任務だから、ここから油断せずにーーー』
「だ、だれか……!助けてください!!」
その声を遮るかのような、人間の大声。それは、黒き森の奥から聞こえてきた。
『……どうやら、緊急の任務が起きたみたいだね。浪波さん、どうか助けてあげて。一人で学園に来れないようなら、案内もお願い』
「…………」
面倒なことになった、という本音を呑み込み。「わかった」とだけ告げた。
現場にかけつければ、数匹の狼……ウェアウルフが一人の人物を囲んでいた。墨のような黒髪は短く、頭頂部からは大きなアホ毛が生えている。服装は白のワイシャツにサスペンダー付きの黒い半ズボン、そしてボロボロのスニーカー。ただ、カレンはその人物の容姿ではなく、別のことに気付き目を丸くする。
(発動体が……ない?)
魔導次元に住まい、魔法を扱うものはひとりひとつーー一部例外もいるがーー「発動体」と呼ばれる、魔法を放つためのアイテムを所持している。カレンの場合は手製の栞だが、他にもダガーナイフやスマートフォン、果てには自分自身の身体を発動体とする者もいる。
だが、囲まれている人物はただウェアウルフに怯えるだけで、闘おうという意思が見えない。腰を抜かし、かたかたと震え、口からは声にならない音が漏れている。
栞を構え、短く詠唱する。そして次の瞬間、ウェアウルフたちの眼前で光球が瞬き、驚いた獣たちは一目散に逃げ出した。
「生憎、こっちも疲れてるから……【ルクス】で退けるだけになるけど、十分でしょ」
「ぇ、あ……る、るく……?」
声に気づき振り向けば、先程まで襲われていた人物ーー見れば少女だと理解出来る顔立ちだーーが立ち上がり、恐る恐るカレンのことを覗き込んでいた。
「そう、リベラルアーツ魔法のひとつ……って、ハーベストに通っていれば学ぶでしょう?」
「りべ、ら……?魔法は分かりますけど……はーべすと……??」
嫌な予感がした。ここまで疑問符が飛ぶ言葉は今まで聞いたことがない。そして、嫌になるくらいの懐かしさを覚えた。なにせ一年前、「自分も似たような立場」にあったのだ。
それでも、信じたくなかったのか。カレンは少女にこう問うた。
「…………まさか、あなた……こっち(魔導次元)に迷い込んできたの?」
「ま、迷い込んだ……かも、しれません……ここ、どこなんですか……?」
涙ぐみながら自身を見上げるその顔が、全ての答えだった。
Chapter2「道化未満と人真似以上」
浪波カレンが黒き森にて、名も知らぬ少女を宥めているほぼ同時刻。
茶髪の少女が一人、ハーベストの中庭にて苛立っていた。
というのも、彼女の隣に腰掛ける人物が悪気もなくそこに存在するからという、誠に理不尽な理由によるものである。
「全く、いつまでもそう機嫌を損ねないでくれたまえ、ラビリくん。私はただ、君と親しくなりたいというだけなのに」
「気安く話しかけるな、アスカの偽物が」
「……これは手痛い返しだねぇ。まさか、私が【チェンジアザー】を使わずとも驚く人がいるだなんてと思ったけれど、こうも嫌われているとは……」
そう。ラビリという少女は、愛咲明日翔という少女を徹底的に嫌っている。というのも、本来彼女には「アスカ」という同じ年の幼馴染がいた。共に魔導次元で生まれ育ち、共にハーベストへ入学しようと約束した大切な存在。
だが、アスカはクリーチャーによって殺された。結果、ラビリは一人でハーベストへ入学したのだが……入学して数年が立ったころ、「あすか」と名乗る現実世界からの生徒と鉢合わせた。だが、それが間違っていた。
アスカと明日翔の容姿が……あまりにも似ていた。それこそ、アスカは幼少期に死んでしまったため、完全一致ではないのだが……アスカが成長すれば、まさに容姿だけは明日翔のような女性になっていただろう。つまるところ、「ラビリが明日翔にアスカの幻影を重ねて勝手に期待して、勝手に裏切られ、その結果勝手に嫌っている」ということだ。
後にハーベストの学長であるドロシー・フロム・オズに聞いたことだが、「世界には、自分と似ている人が少なくとも三人はいるんだよ。ラビリちゃんの幼馴染のアスカちゃんと、現実世界の明日翔ちゃんはその一例なのかも。札魔導の浪波カレンちゃんと変身魔導の浪波カレ……アリスちゃんも、別々の世界で産まれたけどそっくりなところあるし……」ということらしい。
「そんな厄介なシステム、作らないでほしかった……」
「何か言ったかい?」
「っ、なんでもない!!!」
いけない。厄介の種である彼女の前で余計なことを言ったら、この先何があるかわからない。
「あ、あたし……次、授業だから!!じゃあね!!」
なんて言い残して、ラビリは急いでその場を後にする。因みに現在は春休み真っただ中であり、一部では進学に必要な単位が不足している生徒向けに集中講義を開いているらしいが、「ちょっと空気読めないけど頭はいい正義のヒーロー」として通っているラビリには関係ない話。この場から逃げるための言い訳に過ぎない。
嘘に気付かなかったのか、或いは気づいていながら指摘しなかったのか。残された明日翔は、「……私は、彼女を知りたいと思っては……」と、どこか悲しそうな顔をしていた。
Chapter3「機械と奇跡と希望の力」
桜の花が、魔法使いが、空を舞い、鮮やかに視界を彩る。
紫髪の女性……花槍パトラは、その光景を見つめて楽しそうに目を細めている。
「まさか本当に、魔法の世界へとたどり着くだなんて」
というのも、彼女はこの世界の生まれではない。魔法など御伽噺だと一蹴される世界……現実世界からの来訪者だ。
パトラは、現実世界ではとても優秀な科学者だった。しかし、そんな姉よりも優秀な妹に世間の注目は奪われ、彼女は妹の影に隠れ相応の評価をされなかった。自暴自棄の末だったか、あるいは元から興味があったのか。「別の世界に行きたい」という一心で作り出した機械仕掛けのゲートは、見事その願いをかなえ、こうして新世界の学生として居場所を与えるまでに至ったのだ。
「桜の花も綺麗ですし、Wi-fiもしっかり管理されている。空を飛び回る子たちがいなければ、きっと現実世界だと見紛うでしょうね」
なんて、誰に言うでもない独り言をつぶやく。新たな魔法使いの卵を祝う式は無事に終わり、幼いころからの知り合いとたむろする生徒や、見慣れぬ顔をこっそりと眺める生徒もいる。そんな中でもパトラは年長者の部類ーー魔導次元出身者である十代前半の生徒が主に入学するのに対し、彼女は二十二歳ーーであり、なおかつ現実世界という異世界から来たのだから、どうしても浮いてしまうのだった。
(まぁ、いつもと変わりませんけどね)
などと考えていると、春風に乗って一枚の紙が飛んでくる。それはまるで導かれるようにパトラの足元に落ち着き、動きを止める。
「あらあら……誰かの落とし物でしょうか?」
彼女はしゃがみこみ、それを拾う。そして、紙面に書かれたそれを読み上げる。
「魔導登山サークル……入部届?」
その声に呼応するように、少女の声が響く。
「あ、あのっ!それ、私のです!!」
パトラは一瞬、目を疑った。そこには、自身と瓜二つの少女がいたのだから。
Chapter4「少年少女と少女少年」
「ひーまーだぁー!」
指定されたこの場所は、まさに研究室よろしく退屈をつぶせそうな物は何一つなかった。ゆえに、こうして現状を世界に残しては身を世界と同じように回すしかないのだった。
「でも、せんせいはもうすぐくるって……だから、まってよ?」
その横で律儀に立っている片割れは、視線だけでこちらを追っているが、一見すると目が伏せられているため呆れられているようにも見える。
「だからって!!こう何分も待たせることないだろ!?それに入学式当日に来いだなんて!!」
「きっと、いそがしいんだと……おもう」
「忙しいんだったら別日にしろってのあのおいぼれ!!」
「入学早々、これはご挨拶だな。リンネ・リーインカーネーション」
背後から男性の声がする。まずい、今の本音が聞かれていた……?そう思ったころにはもう遅く、「げ……」としか声は出なかった。
「カントせんせい……こんにちは」
「あぁ、こんにちは。リンカ・リーインカーネーション。噂には聞いていたけれど、君たちは仲が良いんだね」
「だって、ぼくとリンネは二人で一人、なんだもの。ニコイチ、ってやつ」
「…………ただの双子だっつーの」
リンカと呼ばれた少年……リンネと呼ばれた少女の妹は嬉しそうに笑う。それを見た彼女の兄は、訂正することが面倒なようでぶっきらぼうに吐き捨てる。
そんな光景を見て、部屋の主であり二人を呼びだした張本人……イマヌエル・カントは続ける。
「それに、事情を知らなければ君たちの性別を勘違いするのも、納得がいく。それほどまでに、入学式での様子は違和感がないものだったからな」
「ま、そりゃそうだろーな。なんてったって、リーインカーネーションの人間だし」
「それで、せんせい。カースとくたいのおしごと、なんですけど……」
「あぁ、そうだったな。失礼、その話をするとしようか」
ぴんと、背筋が伸びる。さすがは教師、空気の引き締め方をしっかり分かっている。
「単刀直入に言おう。君たちには、この魔法学園ハーベストの生徒としてだけではなく、カース特別対策委員会のメンバーとして直々に勧誘をしたい。というのも、君たちも知っているようにこの委員会は所属生徒がいかんせん少ない。全校生徒一万人に対して、昨年度の名簿に記載されている生徒は約三百人。そのため、少しでも人員を増やしたく、君たちを呼んだわけだ」
「なるほど、そーゆーこと。んで?直々に勧誘するってことは、報酬金には色着くんでしょうね?」
にこ、と人当たりの良い笑顔を浮かべる。リンカは「リンネ……」と、呆れとも無関心ともとれる声色と視線を向ける。どんな活動をするにも金銭は必要であり、一円たりとも惜しまず貰えるものは貰う精神の持ち主が、リンネという人間だ。
「もちろん、君の期待に応えるつもりだよ。それともう一つ、個人的に聞きたいことがあるのだが」
「ん?どしたの先生」
「君は……どうしてそこまで、お金に執着するんだ?」
金銭に執着する理由。その言葉に目を大きく、丸くする。ぱちぱち、と音が添えられそうなほどあからさまに瞬きをして、その後「なぁんだ、そんなことかぁ!!」と得意げに微笑む。
「どうしてったって、簡単なことだぜ。生きるために必要だから。それだけさ」
「……生きるため、だと?」
「あぁ。俺とリンカは知っての通り双子の兄妹。きょうだいったって、姉弟じゃないぜ?俺は男で、リンカは女。あにといもうと。でも、俺は女の格好で、リンカは男の格好をしている。小さいころからずっと。俺たちは、生まれながらにして『異常』のレッテルが貼られてる。そして厄介なことに、そのレッテルはずっと剥がれない。子供は生まれる家は選べないって言うからなぁ」
「でも、リンネは……それさえも、個性にしようって、言ってくれたの。ぼくが他の子に、『女のくせに男の服だなんて、変なの!』って言われて、泣いてた時……そう言って、慰めてくれた」
「だから、俺はこの服装を貫き通して生きることにした。それが俺と、俺の……一応?片割れの、リンカのアイデンティティになると思ったからだ。まぁそもそもの話、こんな性格と境遇だから、二人とも友達らしい友達はいないんだけどな!!」
双子の息ピッタリな言葉のリレーを見届けたカントは、「そうか」とだけ返す。
「これまで、リーインカーネーションの人間は内々で生活や勉学を完結させてきたため、君たちのように『外』へと来る子は異例だった。だからここへ入学するという知らせが来たときは、どうなることかと思ったが……その様子ならば、安心だな」
「お褒めいただきどーも!」
「ありがとう、せんせい」
「……話がだいぶそれてしまったな、本題に入ろう。先程も言った通り、君たちはカース特別対策委員会のメンバーとなってもらう。そこで、二人にはそれぞれ違う任務についてもらいたいと思っている」
違う任務。連携がある程度取れると確約されている双子を引き離すとは、そこまでカース特対というのは人員不足なのだろうか?
「まず、リンネくん。君には、昨今ハーベスト内外で話題になっている『大声騒動』について、調べてほしい」
「はぁ……」
「続いてリンカくん。君は……そうだな、防御魔法の硬度を上げるため、しばし簡単な討伐任務へ付き添ってもらう。この任務は一歩でも間違えれば命の危機があるため、報酬は高く出すよ」
「わかった……?」
双子は頭上にクエスチョンマークを浮かべたままうなずき……兄がおずおずと手を上げた。
「先生、一ついいか?」
「なんだい?」
「その、おおごえそうどう…………って何のことです?」
「……え?」
今度はカントの頭の上に、クエスチョンマークが浮かぶ番だった。
Chapter5「招かれたイレギュラー」
さいあくだ。
さいあく、さいあく、さいあく!!!
なんでこんなことになったんだろう。わたしはただ、あのもりのおくでしずかにいきていたかっただけ。だれもちかよらないあのばしょで、くちるまでずっと!!
なのにあのこが!あのおんなのこが!!そらからおちてきたあのこが!!!それをじゃました!!!!!
あぁ、うるさい。このばしょは、にんげんがおおい。あたまのなかに、いろんなこえがひびいてくる。
「あのことこいびとになれますように」「あのせんせいがたんにんになりませんように」「あしたもいきていられますように」
どいつもこいつもたにんまかせ!!!いいよ、かなえてあげる。それがわたしの……わたしたちの、いきるいみだから。ぐちゃぐちゃなかないかたをしたからって、たおしにこないでよ?
『サキにネガッタのは、ソッチなんだから』
…………とりあえず、いちどいえにもどろう。ずっとこのなかをはしっていたから、ゆっくりやすみたい。

