はじめに
※この短編には劇場版2、および劇場版5のネタバレ要素が含まれます。
劇場版2HO1と劇場版5HO1が知り合いだったらどうだろう、という想像です
本文
黒き森の中を、一人進む少女がいる。青い帽子の下に金髪を垂らし、その目は片や青、片や紫。その服装もまた似た色で彩られ、わずかな金の装飾が目を引く。その両手に1本ずつ長銃を携え、くるくると回しながら歩き回る。
「この辺だと思うんですけどね〜」
彼女はクリーチャーハントをしにきたハーベストの学生である。のんびりとした口調の割には勇ましく、ずんずんとここまで進んできた。目標のクリーチャーが生息していると聞いたのだが、人どころかクリーチャーの気配もしない。妙なことだった。両手の遊びは、警戒のサインでもあった。こうした嫌なおまじないこそが、大抵は実を結ぶものだ。
銃がその手にしっかりと握られ、6時の方向に向く。
「オーロラコンバージ」
少女は呟いた。銃口から光が放たれ、飛んできた魔法の銃弾をいなす。首を軽く傾ける。耳元から紙数枚分の距離を、それは飛んでいった。
「不意打ちなんて、すごいですね〜。もしかして私、ハメられちゃいましたか〜?」
「ハッ、相当前から気づいてたような素振りで何をほざいてんだ?」
声が返ってくる。ふと、たばこの匂いがした。女性がゆらりと立ち上がり、煙をくゆらせながらやって来る。その右手にも、長銃が握られていた。ぱちり、少女の目が瞬く。その姿には、既視感があったからだ。
「お久しぶりですね、クロアさん?」
「よう、ライラ。相変わらずの度胸だな?」
「クロアさんも、変わらない様子で良かったです〜。魔法の発動体まで似てるなんて、なんだか運命を感じませんか〜?」
ハーベストの学生――ライラは相手の顔を見つめた。その身体は火傷の痕がほぼ全身に残っていて、わずかに顔の左半分が火の手から免れたようだった。黄緑色の瞳が自分を見定めている。ウインクをして返してやった。
相手の口角が僅かに上がった。
「相変わらずのお調子者だな。わざわざもう一回学園生活を送ることにしたのか」
「あなたこそ、アマリリスに参加してるとは思いませんでしたよ〜」
「ハッ、学園ごっこも飽きたんでな」
「ところで……ブレインは、お元気ですか?」
銃口が互いを向いた。ブレイン、すなわちトト・フロム・オズ。少女がトトと関わりを持っていることは明らかだった。
「その呼び方は、あまり学生諸君にしてほしくはないんだがな?」
「本人にそう言われたんですよね~」
へえ、随分と仲が宜しいことで。クロエは肩を竦めた。トトも随分な友達を持ったものだ。よりにもよって、ハーベストに。
「で、俺は仕事をこなさなきゃいけないわけだが。今は気分がいいから、見逃してやってもいい」
「あら~、そんな性格でしたっけ。丸くなりましたね?」
「お前こそ、何か吹っ切れたな。いい顔だ」
クロアの口角が大きく上がった。
「一つ、勝負しないか」
「いいですよ~、魔法決闘ですかね?」
魔法決闘。ハーベストではじゃんけん代わりにすら行われることがある、1対1の決闘。クロアはにこりと笑って、それを受け入れた。
「いいだろう。全力で来いよ、魔弾の射手」
「ええ、あなたこそ。アーティストさん?」
銃口が少しずれる。そして互いに瞳をのぞき込んだ。
「Ready?」
ライラの黄金の目が揺れる。
「Ready」
クロアのたばこが白煙を焚く。
「「―Now」」
銃弾の響宴が、森の中で幕を開けた。

