はじめに
この記事は自作シナリオ「六等星の祈り -Dreaming,Dreamin-」を自PCでやったらどうなるかという妄想を形にしたリプレイ風ノベルです。
以下の点に注意して読み進めてください。
・シナリオ「六等星の祈り -Dreaming,Dreamin-」のネタバレを含みます。
・上記シナリオには記載されていない描写が含まれます。
・シナリオ筆者によるハーベストの解釈を基にした、独自設定が含まれます(例:カース特別対策委員会に所属している生徒の人数、魔法学園ハーベストの入学式の日など)。
・このノベルの結末は、登場人物全員が幸福になるハッピーエンドではありません。
・前パートの読後を推奨いたします。
Chapter6「遭遇」
「と~は言ったものの……資料貰ったところでそこからどうしろというんだか……」
ようやくリンネが長い呼び出しから解放されたころには、ランチタイムをすっかり過ぎていた。リンカはというと、与えられた任務で実際に行動を共にするメンバーに会ってみたいと言い、先に研究室から出て行った。
何しろ初の任務にして、事件内容が漠然としているし範囲も学園内外と来た。具体的にどのあたりである、という情報があれば探しようもあるが……。
「せめて先輩を一人ペアとしてあてがうとかさぁ~?そう言う気遣いもないんですかねカントのじじ……!?」
あまりにも資料とにらめっこしていたからか、悪態をつくときに目を閉じたからか。曲がり角で誰かとぶつかった。その拍子に資料が空に舞う。
(やっべ、早く拾わないと!)
リンネが慌てて紙を一枚一枚集めていれば、ぶつかった相手ーー黒髪に赤いインナーカラーがとても綺麗な人物だーーも、慌ててその紙を拾ってくれていた。そう言えば、入学式の参加者に似た姿を見た気もする……なんて考えるころには、資料は一通り集め終わっていた。
「あ……ありがとう。それと、ごめんね?ぶつかっちゃって……怪我とか、ない?」
ぶつかる直前の独り言(しかもかなりの大声)を聞かれているため、今更口調を改めても意味はない。しかし彼はそんなことに気付くことなく、ぶつかった人物に話しかける。
相手はと言えば、申し訳なさそうな顔をして首をぶんぶん横に振るばかり。両手も添えて自身が無事なことを示すと、慌てて立ち上がりどこかへ駆け出そうとする。が。
「っ!?」
あまりにも激しく首を振った影響か、壁に思い切り激突した。加えて、足取りも不安定なもので一人でどこかへ向かうにしても不安しかない様相だった。
「えっと……大丈夫?どこか行くんなら、ついていこうか?新入生どうし、親交を深めたいしさ」
相手はその言葉にビクンと、上着越しの華奢な肩をはねさせる。その後涙ぐみながらもこくこくと頷いて、歩き出そうとし……今度は足がもつれて盛大に転んだ。
(ほんと……大丈夫なんかなぁ)
なんて思いを胸に、リンネは名も知らぬ、喋らぬ少年……?の付き添いを始めた。
Chapter7「歓談」
「……というわけで、ここを卒業したら現実世界の色んな山を登りたいって思ってるんだ!パトラちゃんは何か、そう言う夢とかはないの?」
「私ですか?夢……というよりは、妹が元気ならばそれでいいかなぁって」
「そっかぁ。ま、その方がパトラちゃんらしいっていう感じする!自分に関することは無欲で、誰かのことを心配するっていうの、まさにぽいもん!」
「そうなんですかね……?」
パトラは桜の花びらが散る中庭で、書きかけの入部届をきっかけに出会った少女・八岳フジと意気投合していた。始めは互いの容姿について、そこから同じ学科に属する生徒であるという共通点を見出して、いつの間にか親しくなっていた。
今でこそある種、捨てた夢を見るために別世界に来たパトラからすれば、同じく別世界で夢を叶えたいと考えるフジは放っておけない存在だった。話してまだ数時間しか経っていないけど、そう思えるほどの親密度になっていた。
「でねでね、エベレストっていう世界で一番の山もいいんだけど、なんだっけ……きょーき?山脈っていう山もあるんだよね?それにも登ってみたいんだ!あと、富士山も!」
「いっぱい登るためにも、お勉強頑張っていきましょう!」
「もちろんだよ!現実世界に行ったらどこから行こうか……な……?」
ふと、フジの口が止まる。そして何度かせきこむと、両手で喉を抑える。目も見開かれ、ただ事ではなさそうだ。
「ふ、フジちゃん!?大丈夫ですか!?」
パトラの問いかけに答えるのも難しいのか、首を横に振ってせきこむばかり。誰か傍にいないのか……とパトラが辺りを見回せば、一瞬だけ誰かが駆ける姿が見えた。そしてその人物を追うように、ゴスロリと呼ばれる服装に身を包んだ黒髪の少女。別の方向からは、大きなアホ毛が目につく墨色の少女。
「す、すみません……どうか、彼女を……私の友達を、助けてください!!」
藁にもすがる思いで、彼女の口からはそんな言葉がこぼれていた。
Chapter8「依頼」
「なんでアンタみたいなヤツの頼みを、私が聞かなくちゃいけないのさ」
「だから他に頼れるような子がいなくてだね……それにほら、困ってる人を助けるのもヒーローの役目だよ?」
「ヒーローにも断る権利があると思うんだけど」
なんてやり取りをしながら、ラビリと明日翔は騒がしい学園内の廊下を歩いていた。明日翔の頼みというのは、今まさに学園内で起こっている「大声騒動」を解決してほしいというものだった。ラビリ自身カース特対に所属しているわけではないので、その手の依頼はカント先生にやってほしいと思っているのだが、曰く「最初に浮かんだ頼れる人間が君だった」らしい。
ふと、早足で歩くラビリの左肩と、前方から走ってきた黒髪の少年がぶつかる。ラビリ側には軽い衝撃だけで済んだが、少年の方は受け身を取れず地面に激突した。
「っ……だ、大丈夫?ごめんね、気づかなくて」
ラビリが心配しながらも手を差し出すと、少年はフルフルと首を横に振り慌ててどこかへと立ち去る。首を振った際に初めて見えたのだが、赤色のインナーカラーがとても印象的だった。
「なんなの、向こうからぶつかったんだし謝ってもいいじゃんか……」
「謝りたくてもできない状況、かもしれないよ。どういうきっかけで声の制御がきかなくなるか分からない症状らしいから」
言葉を交わすことなく去っていく少年に苛立ちを覚えるラビリに、明日翔がそっと補足をする。そして、「彼のような人をこれ以上増やさないためにも、解決を頼みたい」と改めてラビリの目を見て依頼する。
「…………私の気質については、知ってるよね?どんなクリーチャーだろうと殺す。元々は無害な奴だろうと、人間と友好的になろうとしていても、関係なく」
「あぁ、知っているとも。それでも頼んでいるんだ。このまま被害が大きくなって、私の居場所を奪われる方が心苦しいからね」
その言葉のどこからどこまでが、真意なのか。今はどうでもいい。このまま行く先々で付きまとわれる方が迷惑だ。
「いいよ。その依頼、受けてあげる。ヒーローとしてじゃなく、ラビリ・ワンダー個人として」
「……よかった」
返答は、それだけだった。
Chapter9「届かなかった想い」
どうして、こうなったんだろう。
私はただ、先輩として彼女に接していただけ。
こっちに来たばかりの彼女を安心させようとして、慣れないトレーニングにも付き合った。
でも、楽しかったのは事実で。
彼女と話すことが苦だなんて、一度も思ったことはない。
それなのに。
【黒き森に行ってきます】
その一言だけの手紙を見て、私は。
先輩失格、だっただろうか?
「たしかあの子、うつむいてばかりであまり人と話そうとしてなかったから。それで気味が悪くて……」
「たまにこっちが話しかけても、謝ってどこかへ行っちゃうし。あんな子と一緒にどこかへ行くだなんて物好き、きっといないですよ」
「……もしかして先輩、心配とかしてるんですか?」
足取りを探すために聞いた言葉が、頭の中でこだまする。
「浪波先輩にいつもお世話になるの、なんだか申し訳ないです」
「だって、先輩も忙しいでしょうし……それに、ボクなんかのために貴重な時間を割くの、勿体ないでしょう?」
「だから、しばらくは同級生とか……色んな子に、頼ってみようと思います」
「もし駄目だった時は、……お言葉に甘えて、先輩を頼らせてもらいます」
あの時、どうして止めなかったのだろう。彼女の言葉も一理ある、と納得して、後輩の門出を祝う先輩を演じて……その結果がこれだ。
ごめんね、こんな先輩で。本当のことを伝えるのが下手で。素直になれなくて。こんな私でも、神様に祈ることが許されるのなら。
「無事でいて、リリア……!」
Chapter10「わずかな手がかり」
「急にこうなったって……何か、思い当たることとかないんです?こう、変なもの食べちゃったーとか」
【さすがにそれはないよ!ほんとに急に、喉がカーって熱くなって、いっぱいせきこんで……落ち着いたと思ったら、声が……】
「もしかしたら、今学園内で起こってる騒動……なのかもですね。確か、リンネさんがかーすとくたい?とかで……」
「そうそう。まさかこんなところで感染者に遭遇するとは思わなかったけど」
「カース……で、フジちゃんはこうなったのですか?」
「おそらくは。まぁ問題は、どんな欲望がキーになっているか。思い当たるやつから発生源のクリーチャーを特定できるけど、この様子じゃ特定も難しいかぁ……」
【ごめんね、パトラちゃん、リンネちゃん、リリアちゃん。こんなことに、巻き込んで……】
本当にそうである。曲がり角でぶつかった新入生……スミレと名乗った黒髪少女に付き添っていたが、中庭のあたりで突然走り出し、追いかけようとしたがパトラという女に呼び止められた。さすがに放っておくわけにはいかず今現在こうしてここにいるが……スミレの方も心配である。
それにしても。スミレとリリアは多少の違いこそあれど、姿がそっくりである。落ち着き次第二人の関係について聞いてみようか。などと考えていると。
「あ……そろそろ、行かないと……ごめんなさい、皆さん。ボク、黒き森の方に用事があって……」
と、リリアがおずおずと立ち上がる。
「そうなんだ。じゃぁさ、キミにそっくりな女の子がいたら、”リンネが心配してたから早く帰っておいで”って伝えといてよ。私はまだ学園内で調査しようと思ってるから、外にはしばらくいけないかも」
「わ、わかりました……伝えますね」
「き、気を付けてくださいね……!」
パトラの言葉に会釈をし、リリアは発動体のステッキにまたがる。そしてそのまま空を飛び、森の方角へと飛んでいった。
Chapter11「星の便り」
【4月6日 晴れ】
きょうは、はーべすとのにゅうがくしき。なみわせんぱいにはごめんだけど、ぼくはどうしても、いかなくちゃいけないばしょがある。
ひとりでいって、しっかりむきあって、あやまらなくちゃいけない。
あのときみたいに、にげられちゃうかもだけど。それでも。
(許してほしいって思うのは、ボクが弱いからなのかな……おかあさん……)
もうすぐ、くろきもり。ふじさんのことがしんぱいだけど、りんねさんとぱとらさんが、きっとみてくれる。ぶじにかえったら、あのふたりにもあやまりたい。それで、もしなかよくできたr
「あ」
膝の上からスマホが滑り落ちる。それと同時に、探していた後姿を見つける。急いで声をかけて、謝らないと……!
「みつけt……っ……!?」
重心がずれ、バランスを崩す。その姿勢のまま、頭から前のめりに落ちていく。あぁ、地面が近くなっていく。このまま、謝れずに終わるのかな……?

