注意
自キャラの設定を一部無視した設定の元、書かれております。そのため、設定の矛盾に対しての質問は受け付けません。
あと、あんまり調べずに書いたので、ところどころ現実とは不自然に違うところがあるかもしれません。
細かい事を、「ギャグ時空です」の一言で許せる人だけお願いします。(でもぶっちゃけキャラの性格などは一番わかりやすい。)
本編
「ねぇ、なんか賭けない?」
それはあまりにも唐突過ぎる提案だった。
「…いや、どうしてだ?」
「せっかくポーカーしてんのよ?なんか賭けなきゃ面白くないでしょ。」
ここはハーベストの空き教室。集まっているのは6人。全員が円卓を囲んでいる。
俺から右回りに、レイル、クオリア、イーライ、グライス、ヘリーの順だ。
中央にはUNOの束とトランプ。クオリアの私物ではあるが、ほとんど6人の共有と言っていい。
今日は依頼として、この6人で大型クリーチャーを計5体ほど討ち取り、今は最後の大型クリーチャーが活発になる夜を待っている。
その間の暇つぶしとしてトランプしているわけだが…
「ま、ポーカーなら何か賭けなきゃね」
「別に賭けなくても楽しいだろ。」
「いや、刺激が足りない。」
「昔はもっと冷えたやつだと思ってたんだがな、クオリア。」
「私は元からこんなやつ。」
「そうかい、オレとしては断りたいところだが…」
各々の反応はこんな感じだ。
グライスはやる気だろう。彼女は自分の能力に絶対といえるほどの自信を持っている。
ついでにサディスティックな嗜好もあるので、勝利した際のリターンが大きくなる提案に乗らないわけはない。
クオリアもやる気だ。彼女は表情は少ないが、意外と情熱的で刹那的でもある。
何もかかっていないポーカーなどつまらないと感じるし、それが解消されるならリスクも受け入れる。
ヘリーは中立的だ。どちらでもいいからこそ、グライスの発言に対してバランスを取るようにああ言ったのだろう。
イーライは否定的だ。なんせ彼には、絶望的なほどに不運が付きまとっている。
「…じゃあ何を賭ける。」
「…そうねぇ。どうしましょう。」
考えてなかったか…
「勝ったら報酬全取りでいいでしょ。」
「いや、勘弁してくれグライス、ちょっと借金がな…」
「…このクズ!あんたまたなんか蹴り壊したのね!?」
「いやオレのせいじゃ」
「死ねゴミ!」
…イーライがグライスに攻撃されている。また何かしたらしい。彼は異常な(研究者の端くれである俺から見ても)不運を背負っているから仕方ないと言えば仕方ないが…
しかし、となるとポケットマネーもNGだろう。どうするか…?
「金がダメとなると、あまり思いつかない。」
「負けたなら罰ゲーム、の方が良さそうか。誰か、案はないか?」
「罰ゲーム、ねぇ…」
「青汁?」
「何人か効かない奴がいるだろ。主にそこの白衣と不運。」
「不運言うな!」
「言われても仕方ない。諦めろ。」
「罰ゲームなら、いいのがあるわよ。」
レイルの一言に全員が視線を向ける。
「へぇ?詳しく説明しなさい。」
「近く、ミスハーベストコンテストがあるでしょ?」
「…それがなんだ。」
「負けたらそれに登録よ。」
「俺達はともかく、お前達は痛くもかゆくもないだろ?」
「あれには水着部門にセクシー部門もあるのよ?好きなように登録すればいいじゃない。」
「というかそれ、オレらが負けたらー…」
「もちろん女装よ。あ、ちゃんとミスターハーベストもあるから、何なら私たちに男装させてもいいわ。」
…かなり、アレ、な条件だ。さすがに通るわけが
「いいわよね?グライス、クオリア。」
「思いつかないし、構わない。」
「全く問題ないわよ。」
ない…わけが…ないか…
「…なぁ降りていいか?」
「アンタたちの名前を書いた登録用紙はもうあるのよね~。」
「…いつの間に…」
「そういう準備だきゃレイルもお前もクソはえぇよなぁ…」
「あら、ご不満?殺すわよ?」
妙なテンションで、地獄のポーカーが始まった。どうしてだろうか。俺たちはどうにも立場が弱い。彼女らの我が強すぎるのもある…と、思いたいが。
「フォールド。」
「あら降りるの?次負けるわよ?」
「今負けなければいい。」
「ふーん。負け犬思考ねぇ。レイズ。倍よ。」
「じゃ、レイズ。1.5倍ね。」
「なぁこれいじめだろ絶対!」
「「あら、勝負を受けたのに文句言うわけ?」」
「ぐふっ…チェック。」
「どうするの?グライス。」
「…オールインよ。」
「じゃ私も。」
「後悔させたげるわ。」
「やってみなさいよ。ショーダウン。」
手札が公開される。ヘリーは9のスリーカード、グライスはQ3A2のフルハウス。レイルは…スペードの10~6、ストレートフラッシュ…!?
「んなぁっ…!?」
「お疲れ様。さ、ヘリーとじゃんけんしなさい負けたんだから。」
「こっの…チッ、分かったわよ。」
結論から言えば、男衆は完膚なきまでに叩きのめされた。
イーライは持ち前の不運で、俺はレイルとグライスの巧みな協力(アイコンタクト)で早々に落とされ、ヘリーは耐えたものの、じゃんけんに負けた。
かくして俺たちは、全員「ミス」ハーベストコンテストに叩き込まれたのだった。
コンテスト1週間前、俺たちはレイルの部屋に呼ばれていた。
「…おい、レイル。」
「あら、何?」
「説明しろ。」
「ちゃんと女装させるために、私の部屋に来てもらっただけだけど。」
そこは、なんというか…簡易服屋だった。天井にはレールが付いており、そこにさまざまな女物の服がかけられている。
わざわざカーテンで区切った更衣室もどきに、普段部屋の中央に置きものになっているテーブルには、明らかにレイルが普段使っている数倍の化粧品が並べられている。
「…本気なのか?」
「むしろ本気じゃないと思ったの?どうせなら優勝させて死ぬほど恥をかかせてあげるわ。」
「ここに明らかにあなたの仲間が巻き込まれてるんですがグライスさん?」
「コラテラルダメージよ。喜んで借金ごと死ね。」
「地味に賞金も出る。あなたによし、わたしによしのwinwin。」
「全く良くないが?女装で優勝なんて聞いたことないぞ?」
唖然としながら周りを見渡していると、唐突にレイルがヘリーを指さした。
「いーやいけるわ確実に。ね?魔法少女ピンクスターさん?」
…は?聞いたことがない…
「なぁっ!?どうして知ってるんだそれ!?」
「私の情報網を舐めてもらっちゃ困るわよ?あの伝説のアイドル「ポラリス」と、最初期に1年ほどコンビを組んでいた伝説の新星アイドル!
唐突な引退宣言と共に姿をくらまし、以降は一切表舞台に出てくることのない謎の多いアイドルでもある!」
「なっ、なななななななな……」
「これがその御姿よ。信じられる?これ、ヘリーなのよ?」
そういって、レイルは一枚の写真を取りだした。そこには確かに一人のアイドルが写っていた。
「…これは、すごいな…」
「…マジか?髪と目つきくらいしか共通点なくないか…?」
腰までの水色に近い青髪をツーサイドアップにして、ピンクを基調とした袖なしのミニスカ衣装を身にまとい、大きな星型のステッキを抱えるように持つその姿は、
確かに髪の色や目、体格に共通点が見られるものの、それ以外はまるでヘリーと結びつかない。
もしこれがヘリーなら、胸に詰め物をしているだろうし、髪のボリュームのほとんどはウィッグだろう。濃い化粧も施されているに違いない。
それほどヘリーとこの、「魔法少女ピンクスター」とやらには違いがあるのだ。よくて腹違いの兄妹が限界だ。
「どう?信じられないでしょ?」
「…確かに、あのなんか微妙に陰キャ臭い根暗っぽい男が、これねぇ…」
「…チェンジアザーを疑うレベル。本当に魔法の類は使っていないの?」
「声を高く変える魔法以外は使ってなかったそうよ。このクオリティ、そして、ネームバリュー。」
「ね、ネームバリューだって?」
「ええ。あなたが隠れたファンだってやつは意外と多いのよ?1年ぶり、1日限りの復活ってやってやれば、票もいくらか集まるはずよ。」
確かに、ビジュアルに文句はない。相当人気だったようだし、票が集まる可能性を否定はできない、出来ない、が…
「レイル。」
「なに?」
「確かにこれはいい。だが、俺たちはどうするんだ。」
「そうだな。俺たちはこんなにかわいくなるのか?女装なんてしたこともないぞ?」
レイルの発言を聞く限り、おそらくは賞金も目当てのはずだ。ヘリーは確かにインパクトは強いが、優勝にはまだ足りないだろう。
「安心しなさいオスカー。あんた、なんだかんだ線細いし、いけるわ。」
そういってレイルはサムズアップした…ああ、こんなやつだったな…どうしてか、いつも忘れてしまう。
こいつが猪突猛進で、突破の糸口だけを頼りに突撃することを。
「さ、まずは化粧から、かしら?」
「任せておきなさい。この天才が、完璧に仕上げて見せるわよ。」
「私はピンクスターの再現をしよう。」
三人の男が三人の女に三様に引きずられていく。どうやら、逃げられそうにはない…
「…これが…俺か…」
信じられないほど衝撃を受けている。自分にこれほど女装が似合うということが、自身の心に意外なほど深く突き刺さっていた。
確かにレイルたちは信じられないほど「巧かった」。グライスはどこで学んだのか、俺たちに完璧な化粧を施したし、レイルはそれをみて素早く、的確な服を選定していった。
クオリアはレイルの選んだ服を、より的確に似合うように仕立て直した。全員、文句のつけようのない腕だ。
…そのせいで、今俺の心は強い衝撃を受けているわけだが。
「…オレ、もっと、鍛えるわ…」
横ではイーライが筋トレ宣言をしている。奴は黄色基調の、右にかなりのスリットが入ったドレスを着ている。
俺たちの中では一番胸が大きい(もちろん詰め物)が、そのせいかこの中で一番広い肩幅が目につきにくい。ウエストもおそらくは何かで締め付けているのだろうが、
十分な細さだ。ウィッグの黄色のポニーテールや、メイクによる変化と相まってイメージとしては「なぜか格闘術の経験のありそうな、豊満で活発な女性」といったところか。
「筋トレ、俺にも教えてくれ…」
ヘリーはもう、完璧に魔法少女ピンクスターだ。あの写真とほとんど変わらない。これほどの再現率はそうそう望めないだろう。クオリアがやったらしいが…
確か、あの服は最初にレールにかけられていた中にはなかったはずだ。本当にどこから調達したんだ?
「似合ってるわよオスカー。」
「…やめてくれ。」
「あら、人生燃え尽きた男でも女装は恥ずかしいのね。参考になるわ。」
俺は、俺は…今、深い青のドレスを着ている。髪はストレートロングの黒。
目の前の鑑には、普段見慣れた、どこか諦めた顔の青年はどこにもおらず、代わりになぜか、世の中をいつも憂いていそうな、はかなげな表情の薄幸の美女がいる。
信じられないほど顔とドレスが似合っている。白衣の変人が、どうしてここまで美しく着飾れるんだ?意味がわからない…?
「あんたほんとに男なの?飯食ってるか怪しい細さよ?」
「まさしく竹みたいなノッポね。」
好きで長身痩躯になったんじゃない。…と、いいたいが…ここまで完璧に女装させられれば、もう何も言えない。
「ま、どいつもこいつもデカいけど…身長縮める魔法くらいはいいわよね?」
「容姿に関する魔法は許可されないと思う。」
「そこらへんはどうにか交渉してやるわよ。この天才がね!」
「あんたのは脅迫でしょうが。別に顔の形変えるわけでもなし、通るでしょ。」
後ろでレイルが何か言っているが、正直、聞き取れていなかった。
ステージで、可憐な女性がパフォーマンスを行っている。俺たちはそれを見ている…ステージ横の待機場所で。
レイルもグライスもクオリアも、やるといったらやる女だ。当然のごとく、俺たちは蹴り込まれる様に待機室にぶち込まれた。
周りからは俺たちがレイルたちをプロデュースすると思われたんだろう。荷物もこちらが持たされていたし、レイルたちが出ていくのに驚いた生徒がいた。
だが実際はこうだ。あれよあれよともう逃げられないところまで来てしまった。
「…なぁ、逃げないか?」
「どうやって?発動体もない。」
そう。逃げられないのだ。あの鬼女共はご丁寧に、1日前に俺たちの発動体を没収していったのだ。
抵抗したイーライは、レイルとグライスに半殺しにされた。そのあとの手慣れた治療も含め、織り込み済みだったのだろう。
「La♪La~La~…」
ヘリーはあきらめたようだ、恐らくは「ピンクスター」の時の歌を小さくハミングしている。というか、もう動作が女性のそれだ。
仕込まれたもの…と思いたい。俺とイーライはあの日の後、徹底的にアイドルの動作やらなんやらを仕込まれた。
度を越したスパルタ教育の甲斐あってほしくなかったが、俺たちの動作は十分女性的になってしまった。
「ここまで来てしまった…やるしかない。諦めろ、イーライ。」
「いやでも…」
「下手な動作でお前と分かれば余計に恥をかくぞ。」
「ぐっ…」
そう、もはや策は立てられないところまで来てしまったのである。あとはレイルたちの思惑通り、無策で踊り狂うほかない。
「それでは、エントリーNO.22、なんと、ユニットでの参戦になります!ユニット名は魔法少女MCY!それではどうぞ!」
俺たちの自己紹介を聞きながら、ヘリーが真っ先に舞台に飛び出した。
「みんなー!ひっさしぶりー!」
ピンク改めマゼンタスターが現れた瞬間、観客席がどよめく。
「えっ!?ピンクスター!?」
「アレ誰だ…?」
「かわいー…」
「ピンクスターがどうしてここに…!?」
それを私たちは、最後尾に立ちんぼで眺めていた。
「なかなかどうして巧い。」
「そりゃなんだかんだ言って指揮者だし。人の前に立つのはいろんな意味で慣れてるんでしょ。」
マゼンタスターは台本に、舞台を盛り上げるアドリブと、シアンソードとイエローパンチが出やすいような雰囲気づくりを混ぜて実行している。
これは素人では難しい行為だ。あいつ指揮者より役者の方が向いてそうね。
「ふん。私ならもっと巧くやれるわ。この程度すぐよすぐ。」
「あら、なら今からでも出る?飛び入り枠は終了30分前まで受け付けてるらしいわよ?」
「こんにちわ、お初にお目にかかります、皆さん。私はシアンソード。」
「へ、ヘーイ!アタシはイエローパンチ!みんな、よろしくなーっ!」
二人が出てきた。運営に『交渉』したところ、身長を変えるだけならギリギリOKということで、今の3人の身長は全員10㎝は縮まっている。
一番高いシアンソードでも170㎝、マゼンタスターに至っては150を切っている。これなら何をどうしようと男に見間違えることはあるまい。
「今日はこの3人で、この舞台をすっっごく!盛り上げていこうと思いまーす!」
「皆様、どうか私たちのパフォーマンスを楽しんでいって下さい。」
「それじゃ早速!曲スタート!」
そうしてパフォーマンスが始まった。振付の仕上がりは上々。
マゼンタスターの台本にはあえて空白を多めにしたが、彼はこちらの意図をくみ取り、アドリブで二人のフォローや会場を盛り上げる行動を自然に挟む。
残りの二人も、台本をミスなくこなせているので及第点と言えるだろう。
会場の盛り上がりは大きい。『クライアント』にとっても十分に見える。
「そろそろ出てきてもいいんじゃない?ブン屋。」
私は喧騒に掻き消える程度の声で『クライアント』を呼ぶ。すると、バックヤードから一人の女が出てきた。
ショートカットの茶髪に赤眼鏡。ともすれば群衆に紛れて消えそうな、平凡な恰好。
「やぁやぁレイルちん。呼んだよねー?」
「えぇ呼んだわブン屋。報酬の話をしましょう。」
「相変わらずせっかちだねぇレイルちん。3人の雄姿見てかないのー?」
「結果が見えてるものをわざわざ見届ける必要はないわ。これで文句はないでしょ?」
「うん、バッチリー!じゃ、はいこれー。」
そういってブン屋が封筒を渡してくる。クオリアが受け取って中身を取りだす。それはイーライ宛ての請求書だった。部室の設備1式、締めて80万円の請求書に、彼女、藍沢穂乃果のサインが受取確認のところに書かれている。
「まさかよりにもよってブン屋にとは思わなかった。」
「んー、私的にはレイルちんたちのー、ミスハーベストに出場する姿がみたかったんだけどなー。」
「どうしてあいつのミスを私たちが償わなきゃならないのよ。」
イーライへの借金の請求金額が高すぎることに気づいた私たちは、請求元である新聞部に接触した。
するとこの女が出てきてこう言ったのだ。「ミスハーベストに出場して、場を盛り上げてくれない限り、請求をやめない」と。
イーライが相当な借りを作ったことはわかったので、仕方なく承諾したけれど…あいつらが女装向きでよかったわ。
「なかなかうまくいかないねー。」
「上手くいってたまるもんですか、このマスゴミ共…」
「ま、今回は諦めなさい。」
「ふふー、私はあきらめないよー。新進気鋭のクリーチャーハントチーム『金黒同盟』の弱みもー、いつか見つけてあげるからねー!」
「ええ、やってみるといいわよ。諦めるまで付き合ったげるわ。」
彼女は応えず、バックヤードに戻っていった。私たちもここを出ていくとしよう。あんまり見られたくないでしょうし。
あの日は、本当に散々な目に遭った。詳細は割愛するが、今でも夢に見るほどの衝撃だった。ちなみにちゃんと優勝し、賞金30万円も出た。当然のごとくレイルたちに徴収されたが…
「オスカー。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど。」
「女装か?」
「どんだけ気にしてんのよ…それとも、またやりたいの?」
「今度は撃つ。」
「…違うわよ、違うからやめなさいその殺意と悲しみを2:8で混ぜ込んだ眼。」
「じゃあなんだ。」
「ちょっくら家宅捜索よ。」
「お前たちでもできるだろう…」
「私たちじゃ家屋粉砕になるわよ?」
「……わかった。」
またこき使われることになった。嫌な予感がする。また女装するような…それくらい、大変な目に遭う予感が。
