…私が現実世界に帰るところを見たことがない?
現実世界に帰ってない奴なんて割といるんじゃないかしら。あんたもそうでしょ?
まぁ、確かに両親は健在だけど…
…会わないのか?
…正直、気は進まないわ。単純に嫌いなのよ。
ええそうよ。嫌いなの。
話しましょうか?私がどうしてここに来たのか。
あの時から、私は変わっていったわ。
積極的にいろんなことに努力して、自分をどんどん成長させていったわ。
勉強にも打ち込んで、フェンシングも頑張って。
褒められようとかそんなことは頭から抜けてたわ。
そうしてないと、置いて行かれそうだと思ったの。
また戻っちゃう。あの惨めな私にって。
だから、周りも顧みずに必死になってやったわ。
そうして1年くらいしたかしら。
学校で1位の成績を苦も無く取って。
地方の小さなフェンシング大会で優勝して。
努力にも慣れてきて、ふと思ったの。
誉められたいって。
私の知る限り、両親は私を誉めてはくれなかったわ。
だから言ってみたのよ。
「私、すごく頑張ったのよ!」って。
そしたら何て返ってきたと思う?
「そうか。」
それだけよ。それだけ。
私が2度目に傷ついたのは、その時。
でも、その時はこう思いもしたの。
もしかして、まだ足りないのかって。
実際努力なんてしてなくたって、学校でも木っ端のフェンシング大会でも1番にはなれたでしょうから。
だから次はもっと頑張ってみたのよ。
脇目も振らないで。
必死になって。
そうして信じられないほど上の高校に入れることになって。
信じられないほど大きな大会に出られることになって。
もう一度言ってやったの。
「私、すごく頑張ったのよ!」
「誉めてくれる?」って。
ま、あんたなら予想はついてるでしょ?
「そうか。」
それだけ。
私の努力はなんだったのかしらって、その時思ったわ。
信じられなくて、部屋にこもって一晩考えて。
ああ、こいつら私がどうでもいいんだって、
そう思ったら、なんだかいろんなことがどうでもよくなって。
誉めるなんて簡単なこともできない親に嫌気がさして。
その日に家出したの。
よく覚えてるわ。
満月がすごくきれいで、無駄に大きく見えたわね。
行く当てもなくって、ただ、満月に惹かれて…
ずっと歩いて行ったわ。満月に向かって。
ずっと、ずぅっと…
フルーレも持ってたから、傍から見れば不審者だったでしょうね。
そうして歩いて…気が付いたら、ここの正門に立ってたのよ。
恐ろしくちょうどいいことに、ピンク髪の魔女も立ってたわ。
それから?学長に唆されてあれよあれよと入学よ。
親から連絡は来てるわ。手紙で月に1回ね。
いや、読んでないわ。全部破り捨ててるの。
一度読んで、最悪な気分にされたもの、二度と読みゃしないわ。
…さ、私は話したわ。あんたも話したらどう?
公平ってやつのためにもね。
