はじめに
本リプレイはシナリオ「わらしべ長者~コレクターの謀~」を大幅に短縮したリプレイとなっています。一応ネタバレはあるので、気になる方はぜひ本編も遊んでみてください!
GM、PC1、PC2、リプレイ作成:こーや
PC1ハンドアウト
君とPC2は、いつも通り魔導決闘で遊んでいた。しかし、君の魔法の軌道が不幸にもそれてしまう。それた魔法は校舎内に飛び込み、アスタロト先生の大事な宝石を割ってしまった!
キャラクター:アリア・フルムーン
PC2ハンドアウト
君はPC1に借りがある。ある日、君とPC1がいつも通り魔導決闘をしていると、PC1がアスタロト先生の大切な宝石を割ってしまう!
キャラクター:カイル・サイクロン
オープニング
キーンコーンカーンコーン
講義終了のチャイムだ。次の休みは昼休みということで、ほとんどの人間が食堂か購買に向かったが、彼は違った。カイル・サイクロンは講義が終わると、待ってましたといわんばかりにアリア・フルムーンの席に移動する。
「おい、アリア、魔導決闘しよう」
「は?今から?」
「ああ、中庭でだ。新しい研究成果を試したい」
「はいはい」
カイルはそれだけ聞くとアリアを待たずに講義室をゆったり歩いて出ていった。アリアは同席していた友人に話しをすると、すぐにカイルを追う。すぐに追いつき、2人で廊下を並んで歩く。
「順調?」アリアがカイルに言う。
「まあ、これからやれる訳だし」
「ちがうわ、講義のことよ」
「そっちはぼちぼちだな」
「いつかみたいに落とさないでよね」まくし立てるようにアリアが言う。
「……ああ」
しばらくのそのそと歩くと、2人は廊下のあるところに人だかりができているのが見える。人だかりは、あるポスターに目を向けている。ポスターの題名にはこう書かれている「“コレクター”に注意」。そこには、白い仮面を被り、白いタキシードを着た不審な人物が、珍しいものを求めて、魔導次元のあちこちで盗難を続けているらしいという情報が書かれていた。
「物盗りだってさ。お嬢様のお前は用心した方がいいんじゃないか?」
「本当に盗られてもいいものなんて持ってきてないわよ」
「……あっそう」
2人がポスターに気を取られていると、急に後ろから声を掛けられる。
「ちょっといいかい、そこのお若い方たち」
黒いローブを目深く被った老婆が手招きして2人に言う。ローブの隙間からは長いピンク色の髪が出ている。先ほどまでこんな老婆はいなかったはず……100人いれば98人は老婆に振り向き、彼女から占いの手ほどきを受けるだろう。
「おい、アリア、呼ばれてるぞ」
「あなたのことよカイル、私にはあんな怪しい知り合い、いないわ」
……しかしながら、2人はこれをスルー。
「わー!ちょっとちょっと!カイルくーん!アリアちゃーん!!」
老婆が年齢に似合わない少女のような声をあげて呼び止めるが、2人は聞く耳を持たずに中庭の方へと消えてしまった。
「もーう!」
残された老婆、もとい正体を現したドロシー・フロム・オズは頬を膨らませた。
カイルとアリアは中庭に着いた。そこはがらんとしており、2人以外にいるのは、黒いコートに帽子を目深に被った男が一人いるだけだ。彼は何をするわけでもなく、2人の決闘を眺めている。
さっそく魔導決闘だ、カイルは発動体の指輪を構える。対峙するアリアも既に変身し、剣と盾を構え、空色ドレスを身にまとう。美しいドレスは太陽の光を反射させて輝く。
「じゃ、いくぞ、アリア」
「あ、カイル、まって」
「なんだよ」
「先に一回だけあたしがやっていい?私も最近覚えた魔法があるの」
「ああ、そういうことか、面白そうだな。いいぞ」
「じゃ……」
アリアは目を閉じると、剣を振りかぶり、詠唱を始める。
「真紅を映せ浮雲よ!……カーディナルコスモス!」
そして思いっきり剣で空を切ると、三日月状の炎の斬撃が、カイルに向かって飛んでいく。
「うおっとあぶねえ……吹き荒れろ突風よ!」
カイルはとっさに風魔法を使用、大量の暴風で斬撃の軌道を変える。しかしながら、斬撃は非常に強力で、完全には軌道を変えられず、そのままカイルの後ろ……校舎に向かって一直線に飛んでいく。そして……たまたま開いていた窓から校舎の中へと飛び込んでいった。……パリーン!と何かが割れた音が響く。ここら辺の校舎といったら、怖いことで有名な、あのアスタロト先生の部屋があるが……大丈夫だろうか?
「「あっ……」」
アリアとカイルは窓の方を向き、そのままゆっくりと首を回して目を合わせる。アリアは唖然とした表情で、カイルは突き刺すような目で。才能あふれる2人の脳髄は既に最悪の可能性をシミュレートしていた。
「あんたが避けようとするから……!」「いいから見に行くぞ!」「う、うん……」
2人はそそくさと開いた窓に駆け寄り、中を覗き込む。
「……あ゛ーーーーっ」「……」
アリアが呻きのこもった悲鳴を上げ、カイルは現場の惨状から黙って目をそらす。
2人が考えた最悪の可能性は当たってしまった。アスタロトの部屋の前に飾ってある一抱えもある結晶が粉々になっていたのだ。
「あーあ、やっちまったな」カイルがめんどくさそうに言う。
「あーあって……あっ…あんたが変な魔法使うからでしょ……!?」
「ああ悪い、練習中だったもんでな」
「ど、どうすんのよこれ……!?」アリアは頭を抱えて破片を見つめる。
そんな2人の元に、魔導決闘を見ていた黒いコートの男がゆっくり近づいてくる。
「まさかこちらが手を下すまでもなく割るとは……」
男は何か呟いたが、それどころではない2人の耳には入らなかった。
「どうしたのですか?何かお困りですか?」
男はカイル、アリアと並んで校舎の中を確認すると、
「……おやあ……やってしまいましたねぇ……マナクリスタルまで割っちゃって」
「マナクリスタル……?これがか?」カイルはジロリと破片に目を向けて言う。
「知っていますか?そうです!今はほとんど作る人がいなくなって、高値で取引されているあのマナクリスタルです!!いやあ……やってしまいましたねぇ……!どれだけ弁償しなければいけないのか!どれほど怒られるのか……!」
「「……」」アリアは唖然とした表情で話を聞く、それに対しカイルは黙りこくって、何かを思い出すように破片を見つめている。
「……それは困るでしょう?だからワタクシがたまたま持っているマナクリスタルを交換してあげましょう!」
というと彼は懐から大きな結晶を取り出す。どこにそんなもの入っていたのだろうか、まるでマジックのようだ。
「大丈夫!優良な学生様から代金を頂くようなことはしませんよ!物々交換です!そのお題はですね……『暖炉横で見た夢』という書物と、『スキンティアの実』という珍しい木の実を…………おおっと」
と、そこで、かなり強めの風が吹く。
……3人には途方もわからないことであるが、この強風は偶然ではない。先ほどアリアが発生させた炎により風の胎動が発生、カイルが発生させた暴風が風の胎動に乗り、一周して元の場所、中庭に戻ってきたというわけだ。
そして、この突然の強風は、男のコートと帽子を引っぺがすのには充分であった。……コートの下から出てきたのは、なんと白いスーツ!さらに帽子の下の素顔は白い仮面で隠されていた!……そして、その姿はまさしく、先にポスターで見た大怪盗“コレクター”にそっくりではないか!!
「え?」「え?」「……ええ!?」カイルとアリアも驚いたが、一番驚いたのはコレクター自身であった。
「お前……」カイルがギロリとコレクターを睨む。
「“コレクター”ね!!」アリアもすぐに思い当たったようだ。
「ゲゲゲ……!そ、そんなことは……ま、まったく」コレクターは言い淀むが……。
「だから、珍しい書物だの、木の実だのを俺たちに頼んでいた訳だな。『暖炉横で見た夢』なら図書館の稀覯本エリアに転がっているし、『スキンティアの実』はこの学園の先公の力が必要だ。俺たちはお前のコレクションを集めるのにうってつけの存在ってわけだ」
「なるほどね……」アリアは納得したのか、白いスーツの男ことコレクターに向き直る。
「ふふふふふふ……ハハハハハ!」コレクターは高らかに嘲笑する。開き直ったようだ。
「こうなれば仕方がありません!カモーン分身!!!」
高らかに宣言すると、分身が現れ、コレクターがいくつにも増える!その数なんと9体!
「「「「「「「「「ふふふ……どうです?どれが本物かわからないでしょう!」」」」」」」」」
「アリア……わかるか?」
「わからないわ!」
「問題あるか?」
「問題ないわ!」
「じゃあいつも通りにな」
「言われなくとも!」
2人は隣に並ぶ。カイルは指輪をはめた右手を、アリアは剣先をそれぞれコレクターに向ける。こうして戦いの火蓋が落とされた。
戦闘
カイルとコレクターは同時に詠唱を始めたが、慣れているからか、カイルの方がほんの少しだけ早かった。
「渇望する黒き霧よ漂え!ディレクトオブオーバーロード!!」
カイルは発動体である指輪から黒い球体を生み出し、それをコレクターではなくアリアに向かって放つ!
「翔けろ護りの宿命!……エンジェルフェザー!」
待ってました、と言わんばかりに慣れた手つきでアリアは剣を振ると黒球を砕く。すると、そのマナを吸収し、彼女の背中からエネルギー状の白い羽を生やす。
「まだ続けるぞ……!詠唱略、ディレクトオブオーバーロード!そして……カイル・サイクロンの名の下に、全てを奪え黒き雲よ、そして永遠(とわ)に漂え!ゲファタートート!!」
カイルが右手を差し出すと、指輪から黒雲が出現し、空を覆う。それまで晴天だった空は黒へと染まっていった。
「ずいぶんハデにやってくれましたねぇ!しかしパレードはまだまだこれからです!混沌に墜ちろ世界よ!世界を浄化する光よ!カオスオブアンビバレンス!ミスティックキリング!!」
コレクターの9体の分身の内、左真ん中の1体が白い先行弾を発射し、残りの8体は黒球を発射する。そして先行弾はカイルの方向へ進んでいく!黒球も先行弾を追うようにカイルの下へ!!
「危ない!」
アリアが盾を構え、カイルの前に進み出ると、そのままの勢いで白弾をはじき消す。
そして……、
「暴君を罰せ紅の浮雲!ガーネットコスモス!!」
アリアの剣、盾、羽から炎が発生する。彼女は盾を構えて黒球の連弾を受けとめる。さらに最後の一発の反動を利用して空に翔けあがる。
そのまま剣を振りかぶると、カイルが出した黒雲を吸収する。すると、黒雲に穴があき、晴天と太陽が顔を覗かせる。アリアは剣先をエネルギーの源たる太陽にピタリと合わせると最後の詠唱を始める。
「さあ!こっちの反撃よ!……三重の詠唱をアリア・フルムーンの下に命ずる、真紅を映せ浮雲よ!カーディナルコスモーーース!」
アリアが剣を思いっきり振ると、三日月型の炎の斬撃、いや、もはや強すぎて炎の奔流とも言えるそれはコレクターへと向かっていく。それは分身も本体も関係なく全てを薙ぎ払う。
「「「「「「「「「ぎゃーーー避けられませーーーーん」」」」」」」」」
コレクターはモロにそれを喰らうと、発動体である仮面にひびが入る。そして、それは完全に魔法行使ができなくなっていた。
エンディング
「お前たち!大丈夫か!?」
騒ぎを聞きつけた結城斥斗をはじめとする教師陣がかけつける。
「ギャー!わたくしをどうするつもりですかー!?捕まっちゃうんですかー!?!?」
コレクターはぎゃあぎゃあわめくがそのまま教師たちに連れていかれる。
「お手柄だな2人とも!校舎を破壊したのは免除されるだろうぜ!サンキューな」
斥斗は2人にサムズアップするとコレクターを引きずりながら去っていった。
カイルとアリアはそれを見送る。これで一件落着といったところだろうか。
「どうする?俺はさっきので大体試したいことはできたが」
「わたし、午後の講義あるの」
「そうか、じゃあな」
2人は別々の方向へと歩き去っていき、1度も振り返らなかった。

