その光は魔導にて交差する

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これは、二人の「ただの青年」の話。

某日、黒き森。
木々の中を誰かが走り抜ける。薄暗い赤のフードのせいか顔は見えない。その男は任務の帰還途中だったようで、彼が向かう方向と反対の方角にある施設からは、煙が出ていた。彼は向かう、帰るべき場所へ。自分を助けてくれた、あの場所へ。

木々の中を誰かが潜り抜ける。緑の学生服を着て、その出で立ちはまさに「ただの一介の生徒」にしか見えない。何かの演習の後のようで、彼の持つその袋には、いくつかの薬草が入っていた。彼は向かう、帰るべき場所へ。自分の大切な人がいる、あの場所へ。

赤と緑が、交錯した。
黒き森にも、いくつかぽっかりとした草原がある。そこで、二人は偶然対峙した。
学生服を来た青年は、そのまま通り抜けようとする。されど、それを赤いローブの男が止める。
「司、か?」
ハーベストの学生服を着た青年は、十六夜 司は、驚いて返す。
「その、声は」
「へへ、久しぶり。ここに、お前もいたんだな」
顔を隠すように付けていた頭巾を外し、赤い服の青年は司に笑いかける。何年ぶりかの、それでも全く変わらない雰囲気の笑顔で。
「……光、軌?」
司は目を丸くした。彼がここにいるなんて思っていなかった。彼は幼馴染と一緒に、ずっと現実世界で暮らしているものだと思っていた。自らの親友にして好敵手、刀匠仲間の過月 光軌。彼が、今、目の前にいた。
「どうして、ここにいるんだ?」
その疑問を、光軌は遮る。
「お前こそ。しかも……なんでよりにもよって、ハーベスト(そっち)にいるんだよ」
彼は司に笑いかけた。悲しみを湛えた瞳が彼を捉え続ける。司は返す。
「それは簡単な事だ。お前が、光軌がそっちにいる理由と、きっと一緒だよ。俺はドロシーに助けられて、お前はきっとトトに助けられた。ただ、それだけの差だ」
その答えを聞いて、今度は光軌が目を丸くする。そして、しばらくの沈黙を突き破るように、一つの笑い声が響いた。
「それもそうだった!俺達は好んで敵対した訳じゃない。たまたま、助けてくれた人が違っただけだったんだ。……だから、お互いがここにいるんだな」
司もつられて微笑む。
「そうだ。俺達は、昔からそうだよ。俺達の思想は、理念は、変わってないだろ?刀匠を目指す身として、俺達がやる事は、同じはずだ」
光軌はおう、と頷く。そうして、一斉に口を開いた。

「「助けることに、理由はいらない」」

司が楽しそうに聞く。
「何も全く揃えることは無いだろう?」
光軌が嬉しそうに答える。
「たまたまだって。……いつもの司で安心したよ、俺。良かったらもう少し話そうぜ?」
勿論だ、というと共に、司は座る。

心地よい風が、二人の再会を祝福している。草花が、二人の会話を弾ませる。楽しかったこと、苦しかったこと。痛かったこと、辛かったこと。そして、それを乗り越えたこと。
二人は日が暮れるまで、ずっと談笑していた。そして、とうとう日が沈まんとする頃に、ふと光軌が提案する。
「なぁ、司。手合わせ、願えないか?」
「手合わせ、か。いいよ。俺も、光軌と久々に会ったわけだし……俺なりの実力、お前にも見せてやるさ」
「その調子だ。この前みたいには行かないぜ?」
いつもの調子ではなく、かつての面影を残した青年達が。いつもの強き心を持った武人ではなく、親友と再会したただの青年達が。立ち上がり、距離を置き、その刃を抜く。
「我が名は十六夜家23代目当主、十六夜 司。我が刃に銘は無くとも、我が刃に号はあり。その名、『果断』。その悪しき因果を断ち、良き運命を手招く物」
「我が名は過月家23代目当主、過月 光軌。
我が刃の名は『星繋』。これまで我が身が歩んだ軌跡、散った命と守った命、その全てを繋ぎ止め背負いし物」

僅かな光が司の刃に届き煌めく。光軌の刃に差し込み輝く。二人は、どこまでも無邪気に、この状況を楽しんでいた。ずっと会えなかった親友が、好敵手が、今目の前に居るが故に。お互いが折れることなく、突き進んだが故に。

「「いざ、尋常に勝負」」

刃の重なる音が、鳴り響いた。

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