プリプレイ
リプレイ作:こーや
シナリオ名:「ドロシーの集中講義」(作:涼宮隼十)
GM・PC1・PC2:こーや
トレーラー
平凡に暮らしていた君を襲う、突然の事件
それは夢ではないと、目の前の数字が証明してしまう
何度数えても、1足りない。
魔法学園RPGハーベスト「ドロシーの集中講義」
魔法の時間はまだ終わらない。
シナリオハンドアウト
pc1 コネクション:ドロシーフロムオズ 推奨関係:自由
君は、魔法学園ハーベストの学生だ。
ドロシーに連れられ、現実世界からハーベストにやってきて1年ほどが経とうとしていた。
もうすぐ年度末になるある日、無事進級だろうと思いながら授業数を確認していると、なんと、数え間違いで、進級まで1単位足りてないことに気づいてしまう。
君は急いで単位数を満たすため、「単位が最短で取れる」と噂されている「ドロシーの集中講義」を受けることになった。
pc2 コネクション:PC1 推奨関係:自由
君は、魔法学園ハーベストの学生だ。
進級を満たす単位数を獲得し、無事年度末を待とうとしていた君だが、君の親友のPC1は、どうやら単位数が足りていなかったようだ。君は彼を助けるため、彼と同じ授業を受けることにする。
キャラ紹介
PC1:カイル・サイクロン
16歳の男子生徒。学部7年生。いつも制服を着ており、自分の趣味である研究は真面目だが、学校や人間関係のことには疎い。魔道次元のそこそこの貴族。両親の仕事の都合上、生まれてしばらくは現実世界におり、その間は魔法を知らずにそだった。アリスという幼馴染がいたが、幼くして病死してしまった。それを気に病んだ結果、究極の大魔法を求めて研究をするように。研究のためとあらば様々な人、様々な物、様々な魔法に会い、試す。そのため、ふらっと遠くの街や森に行くことがある。
PC2:アリア・フルムーン
15歳の女の子。金髪で、ひらひら系の服がすき。学部4年生。魔道次元出身のお嬢様。元気だが、芯があり、まけず嫌いで、責任感が強い。ある日、黒き森に行ったところ、強いクリーチャーに殺されかけた。そこにたまたま通りかかったカイル・サイクロンに救われる。恩を感じた彼女は、彼の「目的」を果たす為に(勝手に)協力することにした。カイルからは煙たがれているが、それが逆に気に食わなくて意地になっている。変身すると、剣と盾をもつお姫様の姿になる。
シナリオ本編
シーン1 魔法使いの時間
現実世界で暮らしていたカイルは、病弱な幼馴染のアリス、2人の家族とともに、とある有名なテーマパークに遊びに来ていた。
「いいのかよ、アリス? 今日の今日まで入院してたんじゃないのかよ」
「大丈夫! お母さんもお父さんもお医者さんも良いって言ってた!」
「へー、それは良かったな」
「うん、まあ、またすぐに入院なんだけどね。今日は楽しもう!カイル!」
「……おう、もちろんだ」
2人は、さまざまなアトラクションに乗ったり、食事を楽しんだ。そんな中、ふっとカイルが、1人になったとき、一人の少女が声をかけてきた。
その少女は、とんがり帽子に黒いローブ、そして手には大きな箒と、魔法使いのコスプレをしたような格好だった。
「ねぇ、そこの君、魔法に興味ない?」
そう、君に問いかける。
「魔法? なんだ、それ? アニメの話?」
カイルはいぶかし気に問う。
「はい。これ!」
彼女はカードのようなものを君に手渡してくる。
そこには、「魔法学園ハーベストへの招待状」と書いてあった。
「実は、今日の24時に、ここで、このカードを受け取った人限定の、秘密のイベントがあるの!」
「お、おう。楽しそうじゃん…?」
「もし、君が魔法使いになりたいって思ったなら、ぜひ参加してねー!ばいばーい!」
彼女はそれだけ話して、人混みの中へと消えていった。
君の手には、カードが残された。
でも、確かこのテーマパークの営業時間は、夜22時までだったはず。
不思議に思いながら、君はそのカードを見つめていた。
「魔法か…魔法があればきっとあいつだって……。そんなのあるわけないか」
カイルはもらったカードをバッグに突っ込んだ。
シーン2 夢の始まり
君は、テーマパークすぐ近くの併設ホテルに宿泊していた。夜も更け、部屋に遊びに来ていたアリスの寝息が聞こえ始めたとき、カイルは昼間にもらったカードのことを思い出していた。そして、カードの告げる時間の通り、24時ごろにテーマパークの正門の前にいた。
「うー寒っ。あいつの言っていた通り、面白いもんが見れるんだったらアリスも連れてくるか」
もちろん、中は伽藍とした光景であり、従業員ももう誰もいないようだ。正門の前にも、君以外の人は全く見当たらない。
「流石に嘘か…寒いし帰ろ」
君が帰ろうと振り返ったその直後、門が突然音を立てて開き、テーマパーク内の明かりが灯る。
「な……なんだ…?」
君が意を決して中に足を踏み入れると、お城のような建物の前の広場に、昼間出会った少女がいた。
「こんばんは。来てくれてありがとう。」
「ここに来たってことは、君は、魔法使いになりたいって思ったってことかな?」
「魔法使い…まあ、あるけど」
君がそれを肯定した瞬間、突然壮大なミュージックと共に幻想的な光がテーマパークを包み込んだ。
まるで、パレードか何かが始まったかのように。
「私は魔法使い。ドロシー・フロム・オズ。魔法学園ハーベストの学園長をしているの。」
「もしよかったら、君も、魔法を使ってみたくない?」
「はは、そんなものが本当にあったらな」
そういって彼女は手に持った箒でふわりと宙に浮かび、君に手を差し伸べる。
カイルは不思議とその手を取った。
まるで何かが変わるのを期待するかのように。
シーン3 六つの目
そこは、深夜の魔法学園ハーベスト。
新人らしい警備員が、ハーベストの中を巡回している。
「はぁ…配属してすぐ夜当番させられるなんて、聞いてなかったぜ…」
ため息をつきながら、彼が広いハーベストの中を見回っていると、突然、狼の遠吠えのような音が聞こえた。
「ん…?今何か、聞こえたような…こっちか?」
警備員は、声の聞こえた方へと向かう、階段を降り、そこにあった重厚な扉を少しだけ開け、中を覗き込む。
そこには、暗闇の中、不気味に光る6つの目。
「わ…わああああああ!!」
次の瞬間、彼は部屋の中へと吸い込まれた。
そして、絶叫が、深夜の学園に鳴り響いたのだった。
シーン4 一足りない?
カイルは、人が少ない頃のハーベスト図書館のパソコン室で、単位取得数を眺めていた。
もうすぐ年度末を迎えるころ、カイルは進級のために必要な単位数を取得していることを確認しようと、大学のポータルサイトから単位数を閲覧していたのである。
すると、数えている最中、そこにドロシー・フロム・オズがやってくる。
「カイルくん。何してるのー?」
彼女は、パソコンを覗き込むように体を傾けてくる。
「あ、もしかして単位取れてるか確認してるの??そっかぁ。もう進級だもんねー。カイルくんは、今年もちゃんと勉強した?」
意地悪そうに君にそう声をかけてくる。
「まあ、そこそこな。必要な単位は落とさないようにはしてるよ。留年になってもめんどくせえし」
カイルは煙たげな表情で答える。
彼女は君の単位取得状況を見ながら、「へぇー、この講義も受けたんだー。面白かった??」や「もっと私の授業もとってよーっ!」といったさまざまな表情を見せてくる。
すると、彼女が何かにふと気づいたように、パソコンの画面を覗き見る
「あれ…これ、足りてなくない?」
「ほら…」
そうしてドロシーの指摘通り、君が単位を数え直すと、どうやら本当に1足りない。
「い、いや、そんなわけないだろ…? 確かに………足りない」
君が取り乱すと、ドロシーはそれをみてピコーンと何かを思いついたかのような顔で、にまにま笑う。
「ね、もし進級したいなら、とっても早く取れて、とってもカンタンな、今からでも間に合う集中講義があるんだけど、とってみない??」
ドロシーはまた意地悪そうな目で君に問いかける。
「なんだよ、何かあるなら言ってみろよ」
それを聞くと、いっそうドロシーはニマニマした目で君を見下ろすようにしながら言う。
「学園長にはもっと適切で、丁寧な口の利き方があるんじゃないかなー?」
「……………………ちっ」
シーン5 協力
カイルとアリアはたまたま同じ講義をとっており、終了後、昼食に行こうと並んで廊下を歩いていた。
カイルが思わずつぶやく。
「あーあ、めんどくせーな」
アリアが答える。
「なにがよ」
「ああ、ちょっと単位が足りなくてな」
カイルがそう言うと、アリアが足を止める。
「はあ!? あんたバカじゃないの!? いつも講義もホームワークもめんどくさいめんどくさいって…そんなんだから落とすのよ」
「ああ……それでな、ドロシーの集中講義を受けることにした。なんでもすぐにとれるらしい」
「学長の……なんか怪しいわね。あたしもついていくわ」
「お前でもそういう事言うんだな……別にいらねえよ。お前に単位の面倒まで見てもらおうとは思わねえし」
「違うわよ。あたしだって来年の単位になるんだし」
「……ああ、そうかい」
シーン6 宝探し
カイルとアリアはドロシーの集中講義を受けることになり、彼女のいる学長室へと呼び出された。
「2人ともよく来たねー。待ってたよ〜♪」
「あ、そこ座って座ってー」
「ああ」「失礼します」
彼女は遊んでいた最新の流行のゲームを止め、君たちを学長室のソファーに腰掛けさせる。
「えっとね、君たちに受けてもらう授業は、『フィールドワーク演習』っていう名前なんだけどね」
「なんと、この集中講義は、最短で1日で取れちゃいます!ね、すごいでしょ!」
「えっ、この時期からでも取れる単位があるんですかっ!?っていう風にみんな驚くんだよ〜」
「怪しさ満点だな」カイルがつぶやく。
「何か言いましたかー? あ! 授業はね、演習方式だから、講義はこのオリエンテーションだけ、あとはテスト形式の採点なの」
「それでね、どんなテストかっていうと、すごく簡単、私がこの学園の敷地内のどこかに隠した『宝箱』を見つけて、その中にあるこの「1/8(はちぶんのいち)ドロシーちゃん人形」を手に入れて、私に渡してくれるだけで合格っていうテストだよ!」
そういって、彼女は写真で、ドロシーをデフォルメSD化したぬいぐるみを意気揚々と見せてくる。
「といっても、この学園内はめちゃくちゃに広いので、いっこだけヒントをあげるね」
「ヒントは…『わおーん♪』だよ。」
ドロシーは笑顔で君たちにそう告げる。
「じゃあ、早速スタートっ!2人とも、がんばってね?」
それだけ言うと、彼女は、またゲームに戻ってしまう。
「わおーん? 犬かしら」
「いや、ドロシーのことだからドラゴンとかかもしれん」
「とりあえず、人を当たって見ましょ」
そう言って2人は学園長室を出た。
シーン7 情報「犬の鳴き声について」
「取りあえず、犬の鳴き声について聞き込みしてみようぜ」
「そうね」
君たちは校内で聞き込みを始め、まずは男子生徒に声をかけた。
君たちが声をかけると、その男子生徒は振り返る。
「はい、僕に何か用ですか?」
よく見ると、その男子生徒は生徒会長であるフリード・フィリップスのようだ。
君たちがフリードに事情を話すと、
「うーん…学長また変な授業やってるのか…そろそろちゃんとまともな講義してほしいよあの人…」
「まぁ、それはともかく、犬の鳴き声かぁ、難しいね。ハーベストにも、盲導犬を連れた学生やペットの犬とかを敷地内で遊ばせている学生もいるから、犬自体は珍しくない。」
「だから、犬の鳴き声ってだけで場所を特定するのは不可能だと思うな」
「強いていうなら、学長がいった『わおーん♪』っていうのは、ただの犬の鳴き声じゃなくて、【遠吠え】みたいだね。」
「遠吠えだろうと、ただの鳴き声だろうと一緒だろ?」
「いや、それがそうでもないみたい」
フリードは手元のバッグからタブレットを取り出し、何かを検索し始めた。
「犬が遠吠えをする理由は、主に4つあるみたいだ。①仲間とのコミュニケーション手段、②遊び足りなさなどのストレス解消、③寂しさ、④サイレンなどへの反応」
「犬の鳴き声なら、ただの『わんわん』でも良いはずだけど、あえて『わおーん』である意味がそこにあるのかもしれない。」
「うーん、少しは力になれたかな?」
「遠吠えか、まあ探してみるか、ありがとう」
「ありがとうございます」
2人はフリードの話を基に、もっと調べてみることにした。
※新しい情報項目「遠吠えについて」が調べられるようになりました。
シーン8 情報「ドロシーの集中講義」
「こういう時は、先輩に聞いてみるのが一番なのよ」
「なるほどな」
君たちは、ドロシーの集中講義を受けたことがある学生を探し出そうと、聞き込みをすると、どうやら「アマウネト・セト・セメルケト」という紋章魔導学科代表生の少女が、ドロシーの集中講義の単位を取得していることがわかった。
君たちは彼女に話を聞こうと、彼女がよく現れるという中庭に向かった。
中庭には、炎の翼を赤く輝かせる鳥と共に、茶髪でショートカットの女の子が、同年代くらいの友達と仲良さそうに談笑していた。
君たちが彼女に話しかけると、
「えと?私に何か用です??」
「アマウネトさん? ちょっと聞きたいことがあるの。学長の集中講義のことでね」
「ドロシーの集中講義…?ああ、去年取りましたー!確かそうだよねピーくん!」
そういって彼女は隣にいる炎の鳥、フェニックスに尋ねる。
アマウネトはハーベストでは珍しい、クリーチャーを連れている学生として有名である。
彼女が連れているのは、カースを生み出さないクリーチャー「フェニックス」だ。
フェニックスはうなづくように首を縦に振る。
「なんか、去年から始まった講義で、単位がほんとにすぐ取れるらしいって噂が広がってたんですけど、ちょーーーっと難しくて、去年単位取れたのは結局私だけだったんです」
「どう難しいかっていうと…そうですね…教えてもいいんですけど、それは、他の受講者にフェアじゃないかもしれないです…」
「まあ、それもそうなんでしょうけど」
アリアは渋った様子で返事をする。
彼女は少し考えると、何かを思いついたかのように、目を輝かせてこう言った。
「あ、じゃあ、何か魔法で面白いことしてください!」
「そうしてくれたら、つい口が滑って教えちゃうかも…です!」
悪戯っぽく微笑みながら、彼女は君たちにそう語りかけてくる。
「……カイル、出番よ」
「は? 俺かよ」
「あたしこういう細かい芸は苦手なの!」
「わ、わかったよ。…じゃああれやるか、よく見てろよー」
カイルは、大気中の空気と光を集め、揺らめく光球を作りだす。
そして、それを順番に投げ、お手玉を始めた。
アマウネトはカイルのお手玉に釘付けになる。
「わわ!すごーい!!なるほど、そういう魔法の使い方があるんですね!」
「勉強になりました!ね、ピーくん!」
「じゃあ、早速教えてあげますね」
「ドロシーの集中講義は、去年と同じなら、必ず『ドロシーちゃん人形を守る番犬さん』がいるはずです!」
「その番犬さんは、このピーくんと同じ、カースを生み出さない極めて特殊な境遇にいるクリーチャーらしいんです。」
「ただ…その番犬さん、ものすっっっごく人懐っこいというか、一周回ってもはや凶暴というか…番犬さん自体は人にじゃれついてるつもりらしいんですけど…こっちがもうだめーーってなるくらい、容赦なーく魔法使ってくるので、それが、難しいですよーってことなんです!」
「はい。私が教えられるのはここまでです!あとは、自分でその場所を探し出して、その目で確かめてみてください!」
「あ、でも一つおまけだけ…番犬さん、実はしっぽがとても敏感なんです。だから、ちょーっとしっぽをいじめてあげると、すぐ大人しくなりますよ?」
「へえ、しっぽね。ありがとう。覚えておくわ」
彼女から話を聞いた2人は、情報収集を続けることにした。
シーン9 「遠吠えについて」
「じゃあ、フリードの言う通り、遠吠えを頼りに調べてみるか」
「そうしましょ」
君たちは、フリードの情報を元に、ハーベスト近辺で最近遠吠えが聞こえた場所がないか調べることにした。
調べた結果によると、学内の守衛が、最近遠吠えを聞いたとの噂が流れていた。
「へえ、さっそく行ってみるか」
君たちは、守衛室に向かった。
守衛室には、2人の警備員がいた。
「なんだい、学生さん。何かあったか?」
「この辺で何かの遠吠えがありませんでしたか? 例えば、犬とか」
「遠吠え…ねぇ。ああ、あそこのことか」
「警備したことある奴なら、皆知ってるぜ」
「え、どんなところなんですか?」
「夜、図書館を警備してると、いつも地下から聞こえてくるんだ。わおーんって遠吠えがな」
「まぁでも、ドロシー学長から、『あそこは見回りしないように』って言われてるから、俺たちは地下に立ち入ることはないんだけどよ」
「あ、そういえば、この前、誰かあそこに行ったって言ってなかったか?」
そういって、話をしていた警備員は、もう1人の警備員にそう尋ねる。
「ああ…なんか、ジャックの野郎があそこ入って気絶してたところをドロシー学長に見つかったとか言ってたな…」
「まぁ、ジャックも初警備だったから、きっと忘れてたんだろうな」
「まさか、その図書館地下室に行こうってのか、学生さん?そんなことしない方が身のためだぜ。バレちまったら、アスタロト先生にどやされるぞ?」
そう言って警備員は笑う。
「ありがとうございます」
2人は警備室から出た。
「じゃあ、図書室で決まりみたいね」
「ああ、何かいるらしいな。注意していくぞ」
2人は図書館へと向かって歩き出した。
シーン10 図書館の悪魔
君たちが、図書館に向かうと、受付奥に、地下室への階段が見つけられる。
「あっさり見つかったわね」
「じゃあ降りるか」
「待って! こういう時は、一言誰かに言っとかないと」
事情を説明すると、事務員さんは、快く、地下室へと降りる許可を出してくれた。
地下室は基本的には書庫になっているようで、学生でも問題なく立ち入ることができた。
「別になんの変哲もないへやだな」
「そうねえ、怪しいのは…あれくらかしら」
アリアが指したのは、その地下室奥にある重厚な扉だった。
「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた看板があり、扉にも鍵がかかっている。
辺りは地下のため薄暗く、不気味な雰囲気が漂っている。
君たちが耳をすませると、扉から、確かに狼の遠吠えのような音が聞こえてきた。
どうやら、何か生き物がいるようだ。それも、遠吠えは何重にも重なっており、1匹ではないことがわかる。
「やっぱりここみたいね」
「わおーんって感じじゃないけどな」
「取りあえず、リベラル魔法で開けてみましょうか。なんかそんな感じのリベラル魔法あったわよね?」
「ああ、鍵開けだな。あったような気もするし、無かったような気がするな」
「当然、あんたは覚えてるんでしょ?」
「……」
カイルは押し黙る。
「……しょうがないわね」
えいっ! とアリアが変身用の香水を振ると、扉がひしゃげ、大きな音を立てて向う側に倒れた。
「それがアンロックか」
カイルは皮肉げに言う。
「そうよ」
アリアはそっけなく返すと、2人はひしゃげた扉を乗り越え入っていった。
シーン11 遠吠えの正体
2人が扉の向こうへ進むと、そこから冷たい空気が襲いかかってくる。
まるで雪原地帯にいるかのように、辺りの空間が一気に冷え込む。
扉の先も、暗く重たい雰囲気が溢れており、不気味な唸り声のようなものまで聞こえてくる。
君たちが扉の先に足を踏み入れようとすると、またもや狼の遠吠えが聞こえると共に、暗闇の中に6つの目が光輝いた。
目を凝らす、灯りをつけるなどすると、君たちの目の前に、何かがいることがわかった。
それは、巨大な「3つの頭を持つ狼」だった。
「これは…ケルベロスだな」
「……図鑑以外じゃ、初めて見たわ」
どの頭も、口から涎を垂らし、君たちの方をじっと見つめており、長く大きなしっぽを左右に振っていた。
そして、その狼のいる奥に、透明の宝箱らしきものが見える。
中は透けており、「ドロシーちゃん人形」がそこにあることがわかる。
「ちっ…そういうことかよ」
カイルは指輪を構える。
「あの子が言ってたやつはケルベロスだったのね! そうと決まれば……変身!」
アリアはピクシーパフュームを取り出すと、ドレスに剣と盾を持つ姿に変身した。
三つ頭の狼『ケルベロス』は、口を大きくあけ、鋭い牙を君たちに見せると、突然、君たちに向かって、魔法を放ってきた!
シーン12 戦闘
「俺は魔力を溜める! その間は頼むぞ! アリア!」
「まかせなさい! マナの供給はお願いね!」
「くるぞ!」
ケルベロスの一頭がアリアにかみつく!
「くっ、速いわね」
さらにその隙に、ケロべロスの別に二頭が小型の魔導生物を召喚した!
小型の魔導生物は犬のような形をしており、じゃれつくように攻撃してくる。
「くそっ! まだ何もできん。もう少しだけ頼む」
そう言うカイルの周りには、闇のマナが漂い始める。
しかし、カイルの目指す魔法を発動するにはまだ足りないようだ。
「ええ! これくらいなんともないわ!」
2人が布陣を整えている間に、ケルベロスは新しい魔法を唱える。
すると、魔法でできた実体のない牙が出現し、アリアに襲いかかる!
魔法の牙は毒と氷でアリアとカイルの動きを止めようとするが、なぜか2人には届かなかった。
不思議な光が2人を守り、邪悪な力をはねのけたのだ。
アリアは得意そうに鼻をならす。
「防御魔法発……! ヤクタレストアレア…! 実在のない牙なんか食らわないわ! これも必要なんでしょ!? カイル!」
「ああ! いつもより早いじゃねえか」
そう言うカイルには、ついに必要なマナがそろったようだ。
「魔法発動! サイレントサイレン! 俺は時間を超える!」
そう言いながらカイルが次の魔法の詠唱を始めると、その姿が一瞬で消える。
……かと思った次の瞬間には、詠唱を終えたカイルが姿をあらわす。
「ディレクト・オブ・オーバーロード! 溢れ出るマナよ! この手に!」
そう言うと、カイルの手から色とりどりのマナが大量にあふれ出し、2人の間を渦巻く。
「いいわね! カイル! 次はあたしよ!」
アリアは持っていた剣を振りかぶる。
そして、カイルの生み出した暴風のようなマナの奔流を見定めるように見つめる。
「一番濃いところをあいつにぶつけてやるわ! マナの流れをうまく掴めばあたしだって……あれ?」
しかし、タイミングを見失ったのか、そのまま止まってしまう。
「おい! どうなってる!」
「おかしいわね…? 全然見えない……」
ケルベロスはそんな2人もマナの奔流も気にせず、魔法を唱える。
「ガウ!」
ケルベロスはアリアに向かって噛みつき攻撃をする。
その姿はまるで、毒蛇のように素早く、人間に懐いているコブラのようにしなやかだ。
「キャっ!? そんなもの食らわないわよ! 防御魔法! ガーネットコスモス! これで終わりよ! 返り討ちにしてやるわ!」
アリアは剣に炎を纏わせると、襲い来るケルベロスを受け止め、その反動で大きく剣を振りかぶる。
「今度こそマナの奔流を掴んで……あれ?」
しかし、またタイミングを見失い、剣を振ることができない。
「ちっ……」
カイルは舌打ちをすると、風の塊を生成し、黒い風を呼び起こして激しくケルベロスにぶつける。しかし、風の塊は狭い部屋と、その巨体に圧倒され、失速。思ったようにダメージが通らない。
「ダメか……お前がたよりなんだぞ! アリア!」
「わ、わかってるわよ!」
アリアは未だにマナの奔流を掴み切れていないのか、目を上下左右させている。
「ぐおー!」
困惑するアリアをよそに、ケルベロスは魔法を唱え、氷柱を大量に落として2人に攻撃する。
「く……」
「危ない! ガーネットコスモス!」
アリアは魔法攻撃を引き付けると炎で弾き飛ばし、そのまま炎を纏った剣を振りかぶる。
そしてついに、アリアの目が、奔流を捉えた。
「やっと見えたわ! ハーーベストムーーーン!」
アリアが剣を振り下ろし、空を斬ると、虹色に輝く熱波が飛んでいく。
熱波は三つ首まで届くと爆発し、ケルベロスの弱点であるしっぽごと焼き払う。
激しい魔法を受けたケルベロスは、無傷に近いものの、魔法発動に携わる器官に異常をきたしたようで、何度もせき込んでいる。
「はあ…はあ…や、やったわ……食らいなさい…これで…!」
アリアは炎を纏った剣を天高く振りかぶり、今にも振り下ろそうとするが…。
(戦闘終了)
シーン13 エンディング
君たちが、目の前のケルベロスに、最後の一撃を加えようとすると、そこに、ドロシーが箒に乗ったまま、瞬間移動で現れる。
そして、それと同時に、部屋の電気がつく。
「はーーーいストーップ!そこまでーーっ!」
君たちが勢いで放った魔法に対して、ドロシーは指を鳴らして、その魔法を消去した。
「おう…ドロシーか」
「は、はい、学園長先生」
「急に出てきてごめんね。でも、この子、これ以上は怪我しちゃうと思うから…」
そういって、彼女はケルベロスの頭の近くに行って、真ん中の頭を撫でる。
そうすると、左右の頭もドロシーに擦り寄るように近づいてきている。
「え、“この子”ってどういう……?」
「驚いたかもしれないけど、この子、悪いクリーチャーではないんだー。カースも生み出さないし、人を殺すこともない」
「さっきのはその…この子、寂しがりやでね、遊び相手が欲しかったみたいなの」
「だからちょーっと、魔法でじゃれついてくるんだ。可愛いでしょ?」
「こ、これがちょっと…ですか…?」
「この集中講義は、こういう、クリーチャーがいるよってことを知ってもらうための講義なの。まだこの世界には、クリーチャーに対する憎しみや怒りを持つ人は多いけど、全てが全て、倒さなきゃいけないクリーチャーばかりじゃないから。」
「いつか、クリーチャーと人間が笑って平和に暮らせる世界が来ると、いいのかなって、私は思うんだ。」
「そのためには、まず少しずつ、こうやってクリーチャーのことを知っていくことも大切なんだと思うの。」
ドロシーがケルベロスを見て、指を鳴らすと、ケルベロスは、「わおーん」と鳴き、体を動かすと、奥にある透明な宝箱を加えて、2人の前に置いた。
「はい。じゃあ改めまして、このドロシーちゃん人形を、私に渡してください!」
2人は顔を合わせると、同時に肩を落とした。そして、2人は宝箱から人形を取り出すと、ドロシーに人形を渡す。
すると、ドロシーはにこにこしながら君たちに問いかける。
「ね、この授業、勉強になったでしょ?」
「はい…! 特殊なクリーチャーの生態についてはもちろん、調査の仕方まで」
「……俺はそうは思わなかったけどな」
「はーい! じゃあ、この授業よかったって、いろんな人に宣伝しておいてね!」
「あ、でも、次この授業受ける人がいても、ネタバレしちゃだめだよ??アマウネトちゃんにも、ちゃんと言っとこっと!」
「はい」「言われてもしねえけどな」
「それじゃあ、カイルくん、アリアちゃん。改めて、進級おめでとう!」
「来年も、いっぱい学園生活楽しんでね♪」
ドロシーは、満面の笑顔で君たちに微笑んだ。
「あ、あと、このドロシーちゃん人形いる?ほしいよね??」
「いらねえよ」カイルが言おうとするのを止めて、
「はい! もちろんです!」アリアは快く人形を受け取った。
「だよねぇー! 欲しいよねー!」
ドロシーが満面の笑顔で言う。
「じゃっ! 2人とも元気でねー! ばいばーい!!」
ドロシーはテレポートで去っていった。
2人はぼうっとそれを見送ると、再び顔を見合わせる。
「帰るか」
「帰りましょ」
「今日はどっかで食ってくか」
「そうしましょ。あたし、疲れちゃったわ」
2人は、足を引きずりながら帰っていった。
図書館の外に出ることには、辺りは既に暗くなっており、満月が2人を照らしていた。
アフタープレイ
楽しかった(小学生並みの感想)。今回のキャラは自分でも好きで、かつシナリオでも戦闘でも動かしやすいキャラだったので、とても楽しかったです。戦闘でのハイライトは、アリアが12Dと16Dを振ってもハーベストムーンを出してくれなかったことです……。
こんな感じで楽しかったので、これを読んでいる方も是非、アーケードセッションをプレイして、リプレイを書いてみてはいかがでしょうか?

