永劫欠落~All you need is fall~

「永劫欠落~All you need is fall~」

イメージソング Mili「Nine Point Eight」

想定人数:2~4人

想定時間:7~8時間

推奨リベラル:ステルス・ミュート・アンロック・エクスプロード

 

「今回予告」

加速度毎秒9.8メートル。

最終到達速度観測不能。

600秒の間隙に何を残そう。

緩やかに、砂時計が動きを止めていく。

 

──あと590秒。

 

魔法学園RPGハーベスト「永劫欠落~All you need is fall~」

 

ここに、時計ウサギはいない。

 

HO

PC1,2 コネクション:ドロシー・フロム・オズ 推奨関係:自由

君はある日、ドロシーから頼みたいことがあると呼び出される。

君の実力を信用しての依頼と言われ、頼まれたのはアリスという少女の救出だった。

少女を救うべく、君は飛行船に潜入することとなる。

 

PC3,4 コネクション:ドロシー・フロム・オズ 推奨関係:自由

君はある日、ドロシーから頼みたいことがあると呼び出される。

君の実力を信用しての依頼と言われ、頼まれたのはアリスという少女の救出だった。

少女を救うべく、君はある孤島へ赴くこととなる。

 

NPC

「アリス」

そう呼称されているというだけで、本名かは不明。

長い金髪が目を引く十代前半と思しい少女。

 

秘匿HOあり

独自解釈・設定あり

 

秘匿HO

PC1,2

君の潜入する飛行船は魔導次元ではなく現実世界のものだ。

飛行しているのはいわゆるバミューダトライアングルの上空であり、ここには魔導次元に通じるゲートがあることも知っている。

飛行船内部はこのゲートを介してマナの濃度を魔導次元に限りなく近しいものに整えられている。

 

PC3,4

君のいる時代は1945年、第二次世界大戦の終戦直後である。

イベントホライゾンという大魔法はまだ存在しておらず、君は「ブラックホール」「アピアレントホライゾン」を使用することができない。

GMが把握しておくべき情報:

「アリス」とされる少女は二人おり、PC1,2にとっての「アリス」はハンスがエルゴ領域の記憶、過去から儀式の触媒として生み出した少女であるが、PC3,4にとっての「アリス」は結界の内側でハンスを待つ、1945年当時の本物のアリスである。後者にとっての「救い」はハンスとの再会であるため、PCができる「救い」は前者のアリスを無事に帰還させることとなる。

ただしシナリオコンセプトとして、このシナリオの目標は「彼らの結末を観測すること」である。既に確定した、小さな世界のある未来に至るまでを最後まで見届けるというのが目標となる。あくまで製作者としては、というものなので、ありがたくも別な誰かが回していただけるなら、その人によってこの目標は変わるかもしれない。

シーン1(PC1,2)『依頼:未来』

PC1,2はドロシーに呼び出しを受けた。

いつもの学長のように茶化す感じは微塵もなく、真剣な雰囲気だ。

「来てくれてありがとう。頼みたいことがあってね」

「ある女の子を助けてほしいって依頼なんだけど……頼めるかな? 私には、できない理由があってさ」

了承すればほっと息を吐いて一枚の写真を差し出してくる。

写っているのは幼い少女であり、腰まで伸びた金髪が印象的だった。

「アリス、って呼ばれている子でね。まあ本名じゃないらしいけど」

「この子を使ってある儀式がされようとしていてね。ごめんね、ちょっと事情があって詳しいことは言えないんだ」

「放っておくとその子がその儀式に巻き込まれそうなの」

少女や儀式の詳細についてははぐらかされてしまう。伝えられるのはPCの目的地は高空、飛行船の中であるということ。

「燃料の補給のために停泊する場所と、そこで積み込まれる貨物を見つけたの。それに紛れて飛行船に乗って、どうにかしてアリスちゃんを助けてほしい」

「もう先行して何人か同じ作戦に行っているけど……任せるのが一番大事な潜入なの。あ! 作業員の人達は普通の人達だから手荒いことをしたら駄目だよ!」

続いて差し出したのは船の作業員のものだという制服だった。

 

シーン2 (PC3,4)『依頼:期待』

PC3,4はドロシーに呼び出しを受けた。

いつもの学長のように茶化す感じは微塵もなく、真剣な雰囲気だ。

「来てくれてありがとう。頼みたいことがあってね、君がいい子だって知っているから頼むんだけど……」

「ある女の子を助けてほしいって依頼なんだけど……頼めるかな?」

「私には、できないことだからさ」

了承すればほっと息を吐いて一枚の写真を差し出してくる。

写っているのは少女であり、腰まで伸びた金髪が印象的だった。

「アリス、っていう子でね。これはここにいたときの写真だけど」

「この子を核にしたある儀式があってね。ごめんね、あまり詳しいことは分かってないの」

分かっているのはアリスを核にして何かがされようとしているということと、PCの目的地所は海上、ある孤島だということ。

「目的地に行くまでの手配もしたから、あとは君達がやってくれるかどうか」

「──あの子を、助けてあげて」

改めて真剣な表情でドロシーはそう頼み込んできた。

 

シーン3(PC1,2)『停留→潜入』

貨物の積み込みの際に紛れて飛行船内部へ侵入することに挑む。他の作業員からの情報収集をRPで。

「知ってるか? この飛行船どっかの富豪が遊覧用に買ったって話らしい」

「中もほとんど植物園になってるし、その金持ちしか乗らないらしい。自動操縦だから乗組員も要らないんだと」

「購入者が何者かって? 若い男だって話だが詳しいところは知らんよ。なんかの論文で賞を取った学者らしいが」

侵入に伴うリベラルはそれぞれで二回振ることを許可。ステルスで隠れる、アンロックで貨物の中に潜むなど。

飛行船への潜入:ステルス・アンロック 失敗でTP3減少

失敗すると作業員に追われ、逃亡した末に疲弊して乗り込むことに。

飛行船の中に入ってみれば、作業員の言っていたように植物園が形成されている。草本木本問わずに、しかしジャングルのような鬱蒼とした感じではなく、あくまで人に見せることを想定した整えられた美しさがあった。

見たことがないような植物もあり、持ち主が相当に手をかけていることも分かる。

それらに目をやっている内に、ごごん、という振動とともに船は動き出す。陸地がゆっくりと離れ、逃げ場はなくなる。

植物を眺めながらあちこち歩き回っていけば、やがて木の根で作られた檻のような構造を見つけられる。

根は船底へと伸びているようで、太さと長さは相当なものだ。檻そのものも相当な大きさであり、中は根で編まれた床で段構造になっている。

そしてその最上段に少女の姿があった。蔓が作るハンモックの上、寝ているのか、動きはない。しかしその金髪だけははっきりと目に入った。ドロシーに渡された写真の少女に間違いない。

リベラルは二回可能。

檻の開錠:アンロック・エクスプロード 失敗でHP5減少

失敗したら開錠(物理)。

檻の中の段を上り、少女の元へとたどり着くと、気配を察したかふわりと目を開く。

PC達を見てもきょとんとしている。

「あなたはだあれ? ここに何の用?」

「わたしはここにいるように言われたのだけど」

それでも事情説明なりして連れて行こうとすると素直についてきてくれる。

少女の救出に成功すればシーン終了。

 

シーン4(PC3,4)『停留→乱入』

PC達はドロシーの指示に従ってある港に来ていた。

迎えは小さなボート、船頭は若い女性だった。

「学長の言ってたのはアンタらか? 分かっちゃいたが頼り甲斐がありそうとは言えないねえ」

「知ってはいると思うが、ここの海はクリーチャーがわんさか湧いてくる。奴らに気付かれないように進まないと面倒だぜ」

そんなおざなりな注意を受けながらボートに乗れば、ボートは白い蒸気を噴き出してスクリューを回し、出航する。

リベラルは二回可能。

クリーチャーからの隠密:ステルス・ミュート 失敗でHP5減少

ボートは着実に進んでいく。

そんな中で船頭の女性がぽつりと呟く。

「なんのかんの言っても学園の生徒か。学長の教えはしっかり行き届いているらしい」

「あたしはハーベストの卒業生だよ。生憎と戦える類じゃないがね。だからこそこっちに逃げ込んでいる」

「そら、無駄話している間に到着だ」

言葉通り、ボートのすぐ前に陸地があった。

それは様々な花の咲き誇る庭園のようであったが、水に浸かっている箇所が所々に見られる。土地が低いのだろう。

ボートを下りると女性が説明する。

「元々あった土地じゃなくて、浮島みたいに作られた場所らしい。儀式のためのものだろうが」

「ちょっと進めば結界みたいなのが張ってある。上手いことぶち破って入ってくれ」

「……アリスを、頼んだ」

言葉通り、歩を進めれば透明な壁のようなものが確認できた。

結界の解除:アンロック・エクスプロード 失敗でTP3減少

内側に入った途端、開けたはずの穴はすぐに塞がってしまう。

外の様子も見えなくなる。結界が不透明な膜に変じたような感じだ。PCは隔絶された世界に取り残されることとなった。

庭園については知識があるならカーネーションやデイジー、カランコエなどが咲いているのが分かるはず。

広く、見渡すかぎりの花畑で方角すら分からない。

するとPCの視界を長い金髪が横切る。

背丈から幼さの滲むその姿は、何かの残像であったかのようにすぐに消えてしまったが、ある方向へと駆けていったのは見えた。

 

シーン5(PC1,2)『視点流転』

少女との交流パート。

「目が覚めたらここにいて……わたしを使って、世界を繋ぐんだって。どことどこを、なんて知らないけど」

「元々いた場所は……みんながいっつも怖がってて……ずっと大きい音がしてた。外に出ちゃ駄目だって言われてた」

話すのはアリスの過去について。魔導次元に来る前の記憶。彼女はぼんやりとしか覚えていない

そうして歩いていれば二十代に見える若い男に出くわす。

「檻を出た、とは把握していたが侵入者とは予想外だ。誰の差し金だ?」

「一応聞くが、その子を置いて船を降りる気はないか? 目的が果たせればその子を解放することは約束しよう。元より彼女とは別な子だ」

「……時間が来た。あのときから、長かった。さあ、扉を開くとしよう。イベントホライゾンの向こう側へ」

するとそれまで響いていた飛行船の駆動音が止み、ゆっくりと下降していくのを感じる。

船の落ちる速度はどんどんと上昇していく。それは意図された下降ではなく自由落下であり、端的にいって飛行船が墜落しようとしていた。

警告音と同時に壁のモニターが飛行船の下の光景を映し出す。

雲をかき分けて映し出された映像には着実に近づいてくる青い海があった。

「……バミューダトライアングル、とはな。魔の三角海域に、まさか本物の魔法が関わっているとは思うまいよ」

そう言って男は皮肉気に笑う。

 

シーン6(PC3,4)『時間俯瞰』

少女の幻影を追ってPCは進んでいく。結界の色は上が青く、下が黄色くという色へ変化してきている。

幻影は時折現れ、すぐまた消えるといった調子ではあるが、追うに苦労するほどではない。

その最中、外を覆う結界から急に軋むような音が響く。今にもそれが砕けようかという大音声が明らかな異常を伝えていた。

同時に、PCの視界を覆うように花びらが舞う。ぐるりと渦を巻くように広がったそれが散ったかと思えば、眼前には一人の女性が立っていた。写真の少女の面影もある。

「……結界に穴が開いたのは分かっていたけど、お客様がいたなんて。何が目的かしら」

「ドロシー、私がここを出る気がないのも分かってると思ったんだけど……君達も災難だねえ。あの人に頼まれたなら断るわけにもいかないだろうし」

「それで、これは君たちの仕業?」

「覚えはない、か──それを聞いたところで証す手立てがないのが困りものだね。万難を排すなら、君たちにもご退場願わないと」

女性は対処を決めかねるといった調子で手の中の杖をくるくると回す。そこでふと思い出したように聞く。

「一つ、聞いておかないと。『落ちる』寸前にやって来たなら知っているんだろうし」

「……戦争は、終わった?」

「……そう。それなら、一層待つ意味ができたかな」

直後、結界から響いていた音が止む。

 

シーン7(全員)『All Role Fall』

PCは全員不思議な感覚に陥る。

身体が落下するような浮遊感と同時、眼前の光景が入り混じるような視覚の異常であり、飛行船の内部と花畑とが交互に現れ、やがて融合したような景色へと塗り替わる。PC1,2とPC3,4は互いにぼんやりと存在を知覚することができるが、はっきりと姿を捉えられるわけではない。

男の声がPC全員に聞こえる。

「これは──予測されたパラメータと違う? 結界内部に彼女以外の反応が……」

アリスの方にもその声は聞こえたらしく、信じられないといった声になる。

「ハンス……? ……ああ、そういう手段で通ろうとしたのね」

そう言ってそれまで弄んでいた杖を、PCの方へと向ける。

「ごめんね、もしかしたら何も悪くなんかないかもしれないけど。それでも信頼はできないの。これ以上に『ズレ』が大きくなる前に、こちらに干渉できないように強硬手段でいくわ」

 

戦闘

「ハンス」

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1-jHIHfvysMQ2TBvzDr7f13CmNDRaZqQNZsy-Eg-a4Lc/edit?usp=sharing

「アリス」

セカンドレイヤーと同じように戦闘空間を二つ用意。片方はPC1,2とハンス、片方はPC3,4とアリス。

パラレルリンカー以外はレイヤー移動不可。

ハンスとアリスは互いのカバーリング不可。

 

特殊ルール

『自由落下』

バッドステータス:重圧が与えられるとき、そのレベルに-1

グッドステータス:飛行が与えられるとき、そのレベルに+1

 

『重ね合わせ』

PL側のキャラクターはレイヤーが別であっても同じ戦闘空間にいるものとして扱う。別レイヤーに存在するオブジェクトとの衝突は発生しない。

攻撃対象の選択においては別レイヤーのオブジェクトを同時に選択できない。

レイヤーが別の地形については別の戦闘空間にあるものとして扱う。

 

戦闘終了後、飛行船のモニターが着水寸前の海を映す。

同時、PC全員が何かが大きく軋むような音を聞く。

直後、強烈な衝撃がPCを襲い、意識が暗転する。

 

シーン8『Fix Paradox Mix』

PC達は人の話し声で目を覚ます。

周囲は見慣れたハーベストの景色であり、生徒が行き交っている。不思議なことにPCに気付く様子はなく、ぶつかりそうになると避けるも、やはり気付く様子はない。

そんな中でPCへと近づく少女が一人。それはPC1,2が見た姿よりは成長しているアリスの姿だった。

「あら、お客さんね。迷い込んだだけではあるけど」

「あなた達は同年代ね? 案内人は気に入ってもらえたかしら」(PC3,4へ向けて)

「だって、結界に異常があった際にすぐに外に逃げられるような位置にいられては困るもの」

「ここは『落ちる』世界の残像、核になった『アリス』の記憶の中──彼はエルゴ領域なんて呼んでいたかしら」

「記憶だからあなた達はここに干渉することはできないわ。核の私は例外、ここの主だものね」

するとアリスへと声をかける少年が一人駆けてくる。

よく見ればハンスと呼ばれていた男と似た顔立ちなのに気付ける。

「アリス、君、授業はどうしたんだい」

「休講よ。あなたは?」

「実践演習があってね、得意じゃないから勘弁願いたいんだけど」

「ふふっ。頑張ってね」

「ああ」

アリスに手を振ってハンスはまた歩き去っていく。

それを見ながらアリスはPCへと呟く。

「私は現実世界から彼と一緒に魔導次元に渡ってきたの」

「動乱で親を亡くして、同じ孤児院に同じ時期にやって来た。だから一番仲がよかったし、ここに渡るときまで一緒だった──ドロシーが、せっかくなら二人一緒に、って言って連れてきたんだけどね?」

「さて、はっきり言って貴方達がここに関わる意味はないわ。私達を知る必要はないし、何ならここを去っても構わない──それでも私は貴方達に彼らを知ってほしい。そのために呼び寄せたのだし」

「帰りたいならここを昇ればいいわ。でもお願いを聞いてくれるなら……一緒に落ちてくれないかしら? それこそ、時計ウサギを追いかけるみたいに、ね」

アリスのすぐ後ろにぽっかりと穴が開く。

そこに身を投げ込むようにアリスは落ちていく。

追いかけるなら穴へ落ちていくが、帰還を望むならアリスが示した学舎沿いの階段を昇ればいい。昇った先の扉を開くとPCそれぞれの時代へ帰れる。以降は演出は適当になるが基本的にはBエンド想定。

落ちて行った先ではPCのいずれも見たことのない場所へ降り立つ。

子供達が走り回る、保育園のような場所。しかし設備はあちこちにガタがきており、どことなく陰鬱な空気が漂っている。

アリスはPC3,4が出会ったのと同じ姿で、一人の男をそこで見送っていた。PC1,2はハンスと呼ばれていた男だと気づける。

アリスの「いってらっしゃい」という言葉にハンスは「長いお別れだが、待っていてくれ」と返し、名残惜しそうにしながらもその場を去っていく。

 道の向こうへ姿が消えるまで見送った後に、アリスはPCの方へと歩いてくる。

「徴兵令、というやつね。この頃には珍しくもなかった、どこにでも転がっているお別れ。どこにでもあるからといって、平気であるはずもないのだけど」

「そして、この時点では知らなかったけど、彼を待つ時間は私にはなかった」

「彼が還ってくる前に、病気がわかったからね──当時に白血病の治療法はなかったから」

「だからわたしは──」

くるりとPCへとアリスが振り返るのと同時、また彼女の足元に穴が開く。PCと共に、彼女は落ちていく。

着地したのは、また見慣れたハーベストの学内。もっというならドロシーの居室である学長室内だ。

先ほどと変わらない姿のアリスが、ドロシーと向き合っている。

「……ごめんね、期待に添えずに」

「いいえ、魔法もおとぎ話のように万能じゃないのは、分かっていたから──治りはしないんだろう、っていうのは、きっとどこかで」

「──これから、どうするの?」

「彼を待つわ。そういう、約束だもの」

「……そっか」

ドロシーは一礼して部屋を去るアリスをどこか悔しそうな表情で見るも、引き止めはしない。

学長室を出ると、外で一人の女性が待っていたのに気付く。PC3,4はボートの船頭を務めていた女性だと分かる。

アリスはふわりと笑い、

「駄目だったわ」

「……あたしに、何かできることは」

「十分よ、あなたがいただけで救われたことは数え切れないもの」

「でも……!」

ぐっ、と唇を噛む女性は、しかし何も言えずに引き下がってしまう。

彼女を置いて歩き出すアリスはPCへと呟く。

「決断はこのとき。思えば、ここで止められなかったからこそ、彼女たちは自分ではわたしを救えないと思ったのかもね。だからこそ、善意の第三者を助けに呼んだ」

「魔法でもわたしは治せない。それは現実における医療を越えはしない。だからわたしは自分で自分を救うことにした」

また開く奈落が、全員を落とす。

今度は花が地面を埋め尽くす庭園、PC3,4の見た場所。一点違うのは、巨大なモミジの木が根ざしていること。

アリスはその真ん中に立ち、PC達を見やる。

「『アリス』、という人間が送った半生はこんなところね。知ることで何か、思うところがあればいいのだけど」

「知ってほしかったのはこの場所、この記憶、この領域。少女一人を核にしてできたここ──もっと言うならそこから生まれた、また別な少女。あなた達は知っているでしょう? 『アリス』があるからこの領域があって、ここがあるからあの子はいる」(PC1,2に向けて)

「この場所は性質上、『アリス』の過去も未来も全部が同じ時間軸にある。その上で、結果は同じでもあなた達ならその過程を変えられないかって期待もしている」

「できるなら祈ってあげて。彼らの救いがより善いものであるように。それを引き受けてくれるなら、わたしはあなた達にそれを託して扉を開く──嫌だというなら、やっぱり帰る道もある」

モミジの虚が巨大な扉のように変じる。隣には木を伝うような螺旋階段も形成される。

帰還を望むならやはり階段を昇ればいい。これも基本的にはBエンド想定。

扉をくぐるなら落下する感覚があったあと、意識が暗転する。

 

シーン9(全員)『Hounds Find Count』

再びPC達は目覚める。

辺りの景色は木製の甲板と花畑が入り混じったような奇妙な光景のままであり、元は飛行船の中の部屋だったと思しき家具や机だけの空間も見える。

結界は上が赤く、下が青くというグラデーションに変化していた。

やがて近くに倒れている少女も見つけられる。近づけば普通に起きる。

「……ながい、ながーい夢を見ていたみたいなの」

「『わたし』を、ぼんやりと思い出したみたいな、そんな感覚。わたしは、『アリス』の記憶で……? ううん、ぼんやりしてる……」

「……キレイなお花畑なのだし、暗くなっていたら駄目よね。あそこにはなかったお花もいっぱいだもの!」

目を輝かせて花畑を見渡している。

元が部屋だったらしい空間は書類と本が散乱しており、何らかの研究成果が記されている。ハンスという男のものと思われる。

ここで情報収集。

 

「情報1 植物化」

『動物細胞での頂端分裂組織系の発現』と記されたハンスの論文があった。

専門用語を読み飛ばしながらではあるが、人間の寿命を植物と同じ仕組みで伸ばす方法論が記されている。

癌化の危険があるとのことで実践段階には至っていないが、百年以上の延命も見込める。

 

「情報2 ウラシマ効果」

ハンスの調べ物の一つ。

移動速度が光速に近づけば外から見た物体の時間の進みは遅くなる。光速に達すると時間が停止する。

これを説明する相対性理論は1900年代に発表されている。

 

「情報3 結界」

アリスの用いた結界は防御用のそれとは異なり、外と内を概念的に別な世界へ切り分ける機能を持つ。

非常に高度な魔法であり、そのためにアリスは魔導次元に儀式用の孤島を形成したと思われる。

ハンスはずっとこの結界を破る術を模索していた。

 

情報2,3を調べることで情報4が調べられる。

「情報4 自由落下」

重力加速度を9.8メートルとしたとき、単純計算でおよそ10分間の自由落下でこの世界の加速は光速へと達する。

そんな計算結果とともに『魔導次元から現実世界への落下』と大きく記されている。

アリスの『儀式』とは結界で切り分けた空間そのものに『自由落下』という現象を付与するものだ。落下先は現実世界であり、結界の中の世界は魔導次元と現実世界にまたがる形で存在している。

 

PCがそうした情報を共有する中、アリスはじっと一冊の本を抱えている。

それはハンスのものらしい日記帳だった。ボロボロになっており、読める箇所は少ない。

「これ、みんななら読めるかしら? わたしは読めないのだけど」

「分からないけど、読まないといけない気がするの」

再度の情報収集。魔法でかろうじて読める箇所をとぎれとぎれに読んでいくイメージ。

 

「或る手記2」

結界の落下先と思われる箇所を特定した。

バミューダトライアングル。ここは他のゲートと違って奇妙な歪みが見られる。

外部からの干渉と思しいが、詳細は不明。

あとはここを破る術が要る。

 

「或る手記3」

類感を応用しての突破を考案。結界内の条件と似通わせて世界を誤魔化す。

揃えるべき条件は落下、庭園、核──衝突は対衝突が望ましく、現実側からの干渉

核にはエルゴ領域からの 抽出を

 

手記の2,3を調べることで以下の情報を調べられる

「或る手記1」

──時間が足りない。生き永らえ──……理論段階では実践にまだ不全。これでは────……呪いを、応用、

 

この思いを、執念を、欲望を、忘れないためにも。

 

シーン10(全員)『Clock Crash Croak』

進んでいけば遠くに巨大な樹を見つける。

そしてそこに向かって歩くハンスも見つける。

意識が朦朧とした様子ではあるが、ずるずると半ば這うようにハンスはどこかを目指す。

「……ああ、君たちか」

「邪魔は、してくれるなよ。ようやく、望みが叶うかというときだ」

うわ言のように呟く彼は、飛行船で会ったときとは様子が異なる。

カースの利用や望みの内容について言及すると一層取り乱し始める。

「僕は、彼女に、会うために──会って、何を」

「なぜ、会いたかった? 違う、帰って、還って、今度こそ──」

様子がさらにおかしくなったところで、PC達の背後で花弁が舞う。渦を巻くようにして散ったそれが晴れると、そこにはアリスがいる。

「良かった、今度ははっきりと見える……!」

安堵した様子でハンスへと駆け寄ろうとするアリスだが、ハンスは半ば怒号のように、

「その子を今すぐここから離れさせろ!」

直後、彼の体から瘴気のように黒いマナが噴き出す。辺りを飲み込もうかという勢いで膨れ上がるそれと共に、ハンスの体が硬質な樹皮のそれに覆われていく。すすり泣きのような音を立て、ぎしぎしと体躯を軋ませながら大樹の怪物はゆっくりとアリスへと歩を進め始める。

 

戦闘

「連理の枝」

戦闘終了後、中途半端にその変化を残した半人の姿で崩れ落ちる。顔に位置する場所に咲かせた花弁を散らし、中から現れるのは枯れ木のように表皮をひび割れさせ、深い悔いに彩られた青年の顔だ。なおも全身に瘴気を纏う彼は、

「──来るべきでは、なかったかもしれないな、ここに」

「そんなことを言わないで!」

浅い呼吸でそんなことを言って倒れ伏そうとする彼へ、アリスが駆け寄り、抱き止める。

徐々に体を侵食していくカースなど気にした風もないが、ハンスは荒い息のまま、

「……駄目だ、今、カースで寿命を縮めるな──」

突如としてノイズが走ったように周囲の結界が赤、青、黄と極彩色に点滅し始める。

同時、がくんと少女が倒れ込み、その体にもノイズが走り始める。

「加速が光速に至るまでの間に、アリスの死が観測されると、結界が保てなくなる──核を喪ったエルゴ領域が、その子の大元となった領域が、消失する」

アリスは呆然と、

「──嘘でしょう、待ち人を抱き止めることも許されないの。そんな、そんなことって……」

「……無駄になぞ、するものか。要は君が斃れる前に光速を超えればいい。観測不能領域、イベントホライゾン──今なら分かる、あのゲートの歪みは、つまり……」

ハンスは覚束ない手付きで魔法を発動させようと痙攣のごとく手を動かすが、マナはあまりに頼りなく霧散していく。

大魔法使用想定はここ。

以降、PCの行動で分岐。

 

シーン11-A(全員)『i , I ,愛』

イベントホライゾンを使用した場合のルート。

大魔法の効力によって結界の中は誰にも観測できないようになる。結界は完全な漆黒に染まり、少女のものと同時にノイズは収まる。

意識を失っている様子ではあったが、少女の呼吸は落ち着いたものであり、大事はないと分かる。

アリスが、

「……散々にお世話になったからには、きちんとお礼をしないとね」

「……元の場所に扉を繋いだわ。途切れない内に、早く……」

大樹に巨大な扉が現れている。うっすらと開いたその中には、光を一分として通さないような真っ暗闇が広がっていた。

その場を動く様子のないアリスとハンスの容態は一目で生きているのが不思議なほどと分かるもので、決して長くはないと伺わせる。だがそこに悲痛の色はない。

「……その子を、任せた。僕のエゴのために生まれた子だ。それでも、彼女とはまた別な、れっきとした誰かだ」

「──伝手を辿って信頼できる人に預けるつもりだったが……何、魔法使いを目指すのも、悪くはないだろうさ」

別れの演出については適当。二人がここを離れるつもりはない。そもそもアリスが結界の外に出てしまうとやはりエルゴ領域は消失してしまうので元も子もない。

少女と共に扉に飛び込むと、PC達はどこまでもどこまでも落ちていくような感覚を味わう。

そんな中で、先程まで一緒にいたある男女の声を聞いた気がした。

「……そういえば、一つだけ言うことを忘れていた」

「なあに?」

「……ただいま」

「……ええ、おかえりなさい」

最後に、花畑で優しく寄り添う男女を幻視する。

それは光速に至るまでの相対的な永劫、緩やかに停止していく世界で、時間すら歪めた再会の終着点。

そして目の前が真っ白になる。

 

シーン12-A『All you need is ──』

エンディング。

PC3,4:船頭の女性の待つ浜辺へと突然現れたところから。

結界に囲まれていた領域がPCのいる浜辺をドーナツ状に残して消失している。

船頭の女性が声をかける。

「──中に入ってから十分くらいしか経ってないが……」

「中で何が……いや、いいか。所詮、あたしはそこまで踏み込むのが怖くて逃げた卑怯者だ。聞く資格はない」

ボートで港へと戻るとドロシーが待っている。

船頭の女性はドロシーと一言二言やり取りし、すぐにその場を離れていく。

ドロシーが、

「……アリスちゃんは、あそこに残ることを選んだんだね」

「私だと──いいや、当時の学園にいた誰も、彼女を止められなかった。あの子は、何を思って……ねえ、聞かせてくれる? アリスちゃんが何をしていたのか」

全部聞いてからドロシーは少し黙り込んだあとで、安堵したように笑う。

「そう……あの子にも、きちんと救いがあったなら、それでいいかもしれない。彼女にはそれが幸せだったんだろうし……悲しいし、寂しいけど」

「しかしあれだね、その未来の子達が使ったっていう大魔法を、私達はその時までに作らないといけないんだね。じゃないと時間がおかしくなっちゃうし。イベントホライゾンかあ、新しい、大魔法……」

そんなことを話していると何やら爆音が近づいてくるのに気付く。

見てみれば、海の方からプロペラ戦闘機が飛んできている。

高度を落としながら港へと接近してきたそれは、がりがりと地面を削りながら着地した。

その様子を見ているPCとドロシーの目の前で、ヘルメットを被った軍服の男が降りてくる。とても混乱した様子でPCとドロシーへ彼は話しかけてくる。

「大西洋を飛んでいたはずなのに、霧に呑み込まれたと思ったら海が白く変わって……ここはどこだ、ルート上ではこんなところに陸地はない!」

ドロシーは呆然と呟く。

「そっか、あそこが新しいゲートになって……」

PCの対応があった後、ドロシーはこほんと咳払いをして告げる。

「まあ、学長としてこれは言わないとね」

「ようこそ、魔法学園ハーベストへ」

 

PC1,2:扉に入った後、飛行船の墜落寸前の海上に現れたところから。

海に落下するも、水の感触はない。泡に囲われるような不思議な感覚があった後、気づけば砂浜へ着地している。そこは、ドーナツ状になって中央部に大きな穴を開けた奇妙な形状をしていた。

そして後ろからドロシーの呼びかける声がする。

「……それで、ちゃんと見届けてこれた?」

彼女はやけに古びた蒸気式のボートに腰掛けている。珍しく箒ではなくそれでやって来たらしい。

報告を聞き遂げて、ドロシーは言い訳がましく言う。

「詳しく事情説明ができなくてごめんね! ずっと前にPC3,4に聞いた話だと君達は事情を知らなかったっぽいから、その過去を変えるわけにもいかなくてさ……」

「ずっと昔にPC3,4から聞いた話を元にして、『イベントホライゾン』って魔法を作って、君たちがそれを学んで……今日が訪れて。それでやっと、この結末があるの」

ドロシーと話していると、少女が目覚める。

「ここは……? もしかして、お話でしか見たことのない、『海』って場所かしら?」

「あの人達は? とっても懐かしくって、よく知っているような気がする、あの人達……」

「……そっか、お別れできなかったな……最後に何か言っていなかったかしら?」

ドロシーの方からも、

「これまでとは違う。アリスちゃんの結末は決まっていない。アリスちゃんが選んでいいの、不確かで、何も分からなくて、だからこそ素敵な未来をさ!」

「じゃあ、ずっと待っていた挨拶だ」

「ようこそ、魔法学園ハーベストへ」

 

エンドロール『心をこめて、もう一度』

加速度毎秒9.8メートル。

最終到達速度観測不能。

600秒の間隙に何を残そう。

緩やかに、砂時計が動きを止めていく。

 

──あと590秒。

 

ここに、時計ウサギはいない。

 

──いない、からこそ。

これは不思議の国でもなんでもなく。

どこにでもいる誰かの、しかし彼らしか為せなかった物語。

シーン11-B『i ,I ,哀』

イベントホライゾンを使わなかった場合。

苦しみながら、少女が立ち上がる。

「へい、き……ちゃんとみんな、元の場所に戻すから……ここも見えないようにするから」

「PC1,2は、この場所のことは知らなかった……だからずっと、この場所は知られてないはず。その過去が変わると、大変なことになると思う」

「だから、わたしが、なんとかする……」

「『アリス』の記憶を少し、借りる……ここの、光が、重力で逃げられないように……」

そう言って、泣きそうな、それでも綺麗な笑みを見せる。

その身体は端から宙に溶けていくように薄れていく。

少女にハンスが苦しそうに、

「君はそれでいいのか。僕に勝手に造られて、世界を見ることもなくここで……」

少女は首を振り、

「よくないかもしれないけど、こんな素敵な場所を見せてもらったもの。みんなに会えたもの。そもそも生まれるはずがなかったわたしなら、これでもきっといい方なんだ」

アリスは泣きながら、

「ごめんね……今、出口を……」

そう言って手をかざすと大樹に扉が現れる。

ノイズでも走るかのように点滅しているものの、中の暗黒は外に繋がっているように思える。

お別れのときは少女は小さく手を振り、

「ありがとう、さようなら」

PCが別れを拒むようなら彼女はそれを突き飛ばしてでも無理に扉に入れる。

扉に入った直後に襲う深く落下していくような感覚の中、PCは笑顔のまま中空へと溶ける少女を幻視する。

同時、女性のすすり泣きの声と、「これが、罰だとでもいうのか」と呟く男性の声を聞く。

そして先程までいた花畑が端からめくれ上がるようにして崩れていく様も見る。

やがて目の前が真っ暗になった。

 

シーン12-B『All you need is ──』

エンディング。

PC3,4:船頭の女性の待つ浜辺へと突如現れたところから。

「お前ら……どうした? アリスを連れ戻せないのは薄々予想してたが、顔色が悪いぞ」

「それにあれはなんだ? 急に見た目が……」

PCの後ろを凝視する女性の視線を追えば、砂浜の途中から生じた真っ黒な球体を見ることができる。元々結界があった範囲にある球体だ。

見れば球体は徐々に小さくなってきており、さらには浜辺の砂が、海水がその球体へと吸い寄せられており、徐々にその速度は上がっている。

「まずいな、とっとと逃げるぞ」

球体から離れるべくボートが出る。その途中でも海水が吸い寄せられることによって海流が滅茶苦茶になっているのが分かる。

港には蒼褪めた顔のドロシーが待っている。

「海の一部で強力な重力が発生しているって……あの子は、アリスちゃんは何をしたの?」

事情を説明するとドロシーは黙り込み、やがて口を開く。

「強い重力で光を逃がさないようにして観測を防ぐ、って方法かな。そんな重力に巻き込まれたらとても生きてなんていられない……」

「影響はこっちより小さいだろうけど、現実世界の方にも似たような穴ができているはず。巻き込まれたら助からない大穴が……でも、未来にハンス君が結界を破りに来ることが決まっている以上、あの黒い球を消すわけにもいかない……」

「……どうにか、しないと──君達は、どうする?」

 

PC1,2: 扉に入った後、飛行船の墜落寸前の海上に現れたところから。

水面に落下する寸前で箒で飛んできたドロシーが二人をキャッチする。

「……やっぱり、駄目だった、か」

「……アリスちゃんが最後に使ったのはね、重力を強めて光を逃がさないようにして事象を隠す……アピアレントホライゾン、見かけの地平面って呼ばれるものなんだ。それを元にしてイベントホライゾンって大魔法を作った。これがあれば彼女が犠牲にならずにその結界を隠せるんじゃないかって」

「本当は分かってた。PC3,4が過去にもうアリスちゃんが消える未来を観てしまっているから、それを変えちゃうとパラドックスが起きる。きっともっと大変なことになる」

「分かって、いるんだけど……やっぱり悲しいなあ」

一度俯かせた顔を上げ、毅然とした表情でドロシーは眼下の海を見据える。

「過去に観測された未来は終わった。この先はもうあの結界を維持する必要もない。バミューダトライアングルなんて呼ばれて、たくさんの人を飲み込んできた領域を、私は消しに行く」

「──君達は、どうする?」

 

エンドロール『未来を願って、もう一度』

加速度毎秒9.8メートル。

最終到達速度観測不能。

600秒の間隙に何を残そう。

緩やかに、砂時計が動きを止めていく。

 

──あと590秒。

 

ここに、時計ウサギはいない。

 

──いない、からこそ。

これは不思議の国でもなんでもなく。

時は戻らず、祈りでは叶わず、号哭で救えるものはない。

この記事を書いた人

予想以上に沼が深くて入り浸っている人
シナリオたくさん書きたい

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