注意
自作シナリオ「永劫欠落~All you need is fall~」のネタバレを多分に含みます。
構わない、という方だけ閲覧をお願いします。
解説
「結界の落下」
ハンスが書いたメモ書き、という体で作った下図が大体の構造となります。魔導次元から現実世界へ、高さの概念がないから永遠に落下するし永遠に加速し続ける、といったイメージ。
結果的に光速へと近づいていく世界は外部からどんどんと時間が遅れていき、というのが「相対的な永劫」。アリスが斃れるまでの時間を引き伸ばし、ハンスを待つための手立てがこれです。落下が始まってからは次元の隙間に入り込むせいで干渉が恐ろしく難しくなるのですが、PC3,4は落下が始まる寸前に結界内に入り込むことができました。
それがハンスの記していた「類感」とのズレを引き起こし、すんなりと中に入れなかったのが中間戦闘の状態です。類感は2つのものを似通わせると魔術的な意味を帯びるというオカルト用語。落下する密閉空間、内部に数多の植物、何より核となる「アリス」という少女、といった条件を揃えることで結界を破って中に入るというのがハンスの目論見でした。
実際に上手くいったものの、その理論構築と準備にかかる時間に彼の寿命は追いつかず。延命法として打ち立てた植物化理論も実践できるほどの域にはない、ということで足りない技術的側面をカースという力で補ってしまいます。欲望を増幅させるという性質は自分の執念の源ともなると踏んだ部分もあり。
制御できる、というある種の傲慢もあってのそれではあれど、増幅された欲望によって「アリスと再会する」という目的以外の部分、根底の願いが摩耗してしまい、結果的に再会が叶った瞬間に呪いが暴発──というのがPCが介入しなかった場合のifの想定です。
この場合は落下速度が光速に至るまで(外部での10分)の間に結界の核であるアリスが死亡するために領域が消失、そこを元にして切り出された少女も消えます。時間停止まで至れば状態が固定されるために核がどうなろうとも結界は存続するために、外部で10分が経過するまではアリスの死を観測させてはいけない、というロジックでした。PCを呼び寄せた、と語るアリスの残滓(図で負の時間成分とか書いたモノ)はこれを防いでほしかったわけですが。
イベントホライゾンを切った場合のルートは外からの光が届かない観測領域を作る、という方法でアリスの死を隠し、ひいては結界を隠匿するルートです。こっちは正しく「事象の地平面」です。詳しくは小ネタ参照。結界は落下先のバミューダトライアングルと魔導次元を繋ぐ、見えないゲートとなります。
切らなかった場合のルートは少女が「アリス」の知識を借り、ブラックホールを発現させるルートとなります。1945年にはブラックホールなんて存在がまだ立証されていないので、その時間軸では初の魔法となるという想定。これは中から外に光が逃げないようにして観測を防ぐ、というアピアレントホライゾン、「見かけの地平面」のルート。これも小ネタ参照。こっちのルートだとバミューダトライアングルと魔導次元を繋ぐものが魔法のブラックホールになってしまうために、迷い込んだ現実世界の人間が全員亡くなることが確定します。あんだけ注意書きにしつこくイベホラ取れって記したんだから、そうしなかったなら何の救いもないエンドにしていいだろうと思ったので基本的に救いがないです。お前のせいだエンド。
どちらのルートにせよ、何かしらの魔法が関わるためにハンスが「歪み」と記した奇妙なゲートができることに、みたいに考えていました。これがないとハンスがこの落下先を特定できないです。だからこそPC3,4、つまりは1945年という過去の人間がいずれかの魔法が使われる瞬間に立ち会い、未来を確定させておく必要があります。PC1,2については過去の時点で未来が確定されているので問答無用でここに関わることに。
イベホラの発生起源もルートで異なってきます。
ハッピーエンドの方だとかの魔法が使われる瞬間を見たPC3,4の報告を元にして作られ、それをPC1,2が学んで過去においてそれを使用する、という流れに。
バッドエンドの方だとこんな方法でアリスの死を隠せればまた違った結末にならないか、という足掻きの成果として。とはいえもう未来が確定してしまっているのでやはり流れは変わらず。
このシナリオはそんな感じで、勝手に大魔法の発生まで書いてしまった好き勝手シナリオになります。解釈違いも異論も甘んじて受け止める所存です。

小ネタ
「ネーミング」
登場人物の名前やら謎用語やら。一応は元ネタありき。
アリス:言わずもがなの不思議の国。アリスのエレベーターというマイナーもマイナーな物理学における自由落下絡みの喩え話をプロット組んだときに思い出したのもあり。ちなみに一緒に落下している物体は互いが互いを静止しているように観測するというものです。相対速度とかの話でもある。
ハンス:ある作品のあるキャラとしか。ネタバレになってしまう。イメソン楽曲を自分が聴いたゲームのキャラですね。内面もアリスとの関係も全然違いますが。
エルゴ領域:正しくはエルゴ球。回転するブラックホールの外側にできるとされる領域。負の時間成分を持つとされるのも本当ではあれど、それは記憶が実体を持つなんてミラクル空間ではない。このシナリオはその辺は多分、魔法による不思議パワーが働いています。
頂端分裂組織:突如として放り込まれた生物ワード。ハンスの不老化理論を考えるときに「突っ込まれたらイヤだなあ……」という逃げの思考に走って聞き馴染みがあまりないだろうワードをチョイス。基本的に成長を止めない植物が、細胞分裂の限界数を引き上げるための仕組みです。もちろん人間にこれを発現させるびっくり技術は今の所ありません。連理くんはこれを組み込んだので樹の怪物になった。カースこわひ。
連理の枝:発動体と合わせての比翼連理。「天に在りては願わくは比翼の鳥と作らん、地に在りては連理の枝と為らん」ではあれど、彼の翼は片方もがれているので鳥にはなれず。それでもクリーチャーには成り果ててないためにわざわざキャラシはPC用のもので作成。おかげで最終戦闘のくせに強いとはいえない感じに。
バミューダトライアングル:魔の三角海域。大西洋のバミューダ諸島あたり。難破船がいっぱいな領域。このシナリオではその秘密が「消えた船は全て魔導次元に消えていたんだよ!」というものになります、Bルートだと全滅してますが。そんなゲート生成シナリオでもある。解釈違いも異論も(ry PC3,4のエンディングで登場した謎プロペラ機もそんな迷い子、1945年12月5日にこの海域で消息を絶ったとされるアヴェンジャー雷撃機です。最後の通信が「白い水が」なんてものだったという与太話があったので採用。
青方偏位・赤方偏位:シナリオ中では触れていませんが。結界の色の変化に関するものです。近づく光源からの光は青っぽく見え(青方偏移)、遠ざかる光源からの光は赤色っぽく見える(赤方偏移)というもの。光速加速中の観測において見られる現象であり、光速に到達すると真っ黒になります。イベホラ描写に使えそうだったのでそれっぽくインチキも交えて採用。
シュレディンガーの猫:これもシナリオ中には登場せず。中二病が大好きな観測できない限りは可能性は収束しないというもの。アリスの死を観測させない云々はこの関係。あとPCの帰還についても、中に入ると観測できるのが内側のみ(イベントホライゾン内から外の観測はできない)なので当人達が来た時代(最後に観測された時間)が戻る時代となるというインチキ理論やってます。
イベントホライゾン:事象の地平面。情報の到達速度でも最高速である光速を超えることで観測不能となった領域。宇宙の外側がこことされる。
アピアレントホライゾン:見かけの地平面。強い重力などによって光が逃れられなくなり、内側から情報が伝わらない=観測できない、という状態になった領域。代表例がブラックホール。
「花言葉」
連理の枝が使っていた特技名。全部花の名前ですが、もっと言うならイメソンにしている「Nine Point Eight」に出てくる花の名前です。あとは謎のモミジ。アリスといったらやっぱり大樹の虚に落ちるところから始まるので。
Carnation「無垢で深い愛」「あなたに会いたくてたまらない」
Daisy「純潔」「平和」「希望」
Chrysanthemum「高貴」「高潔」「高尚」 Red Chrysanthemum「あなたを愛します」
Kalanchoe「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「あなたを守る」
Lisianthus「すがすがしい美しさ」「希望」
Iris「愛」「あなたを大切にします」「伝言」「恋のメッセージ」「よろしくお伝えを」
最後に二人がいた大樹はモミジ「調和」「大切な思い出」「保存」
制作のお話
この辺はシナリオ製作者の自己満足の域です。どうやって思いついたかというただの思い出語り。シナリオ関連の解説はもう終わっているので興味ない方にはブラウザバックを推奨します。
起点はいつもどおりに機械学科のキャラシできゃっきゃうふふしていたときに聴いていた「Nine Point Eight」です。「落下しながらの魔法戦ってなんかカッコよくない?」という雑な思いつきだけメモ。
それとは別に世界観説明読んでるときに「ドロシーがずっと生きているのを利用すれば年代ずらしての叙述できそう」というのもしばらく後で思いつきました。
そして何かの拍子に「これ合体できないか?」という感じで悪魔合体したのがこのシナリオです。うろ覚えですが、落下先は海とかだと描写きれいそうだなー、とプロット組もうとしたところで「バミューダトライアングルが実はゲートだったなんてどうだろう?」というのを思いつき、バミューダトライアングルについて調べ、上の戦闘機の消息不明を知り──という流れで「終戦直後の時間と繋げられそう」といった調子で件の叙述と組み合わせるプロットを書き始めたはず。
ウラシマ効果が使えそうだというのはそのアイデアが出た瞬間にあったので、あとはそれを自由落下と一緒くたにするために謎結界の設定が完成。じゃあ何故に時間を止めたかったのか、という動機からアリスとハンスができました。ある方の「こいつら重いしめんどくさい」というのが的を射ていますね。
そこにPCが関わる必然性は何か、というところが難点だった記憶もあります。PC1,2は過去において未来が確定されたから、というのがあれど3,4は何故……? というのが。必然性自体は見届けないとイベホラが生えないというのがあるとはいえ、動機が難しい。なので善意の第三者がどうこう、という下りを作ろうとしてまたアリスが重くなりました。
そんな感じで、まさしく重力に引っ張られるようにNPC枠を(愛憎的な意味で)重くしながらできたシナリオです。
気に入っていただけたならこれ以上はありません。

