今回予告
──話をしよう。
まずは、君から。
【概要】
シナリオタイトル:そばにおいで、はなしをしよう。
使用サプリメント:魔法学園RPGハーベスト 基本ルールブック
推定時間:最低30分(RPによって変動)
人数:1人(通過者はGMレス可能)
推奨リベラルアーツ:なし
略称:そばしよ
【ハンドアウト】
君は大切な人を失った経験がある。もしくは、現在大切な人に会いたくても会えない状況にある。
《どんなPCに向いてる?》
・大切な人に会いたいけど会えない人
・足りない勇気を大切な人から貰いたい人
・優しい夢が見たい人
ちょっとしたキャラクターフレーバー作りや、何かしらのシナリオに行く前にキャラの解像度を高めたい!という時に使っていただければ幸いです。
戦闘難易度は低く、取得魔法にアクション魔法やリアクション魔法、リベラルアーツは必要ありません。ハンドアウトに沿っていれば、どんなPCでもシナリオに参加することができます。
以下本文
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【GMへ】
PCと大切な人の思い出の食事や、PCの好きな食べ物などを事前に聞いておいてください。
食べ物を聞いたうえで、必要な調理器具があれば部屋(家)にあるか確認をとってください。
【シナリオ本編】
包丁が木の板を叩く音で君は目を覚ます。うすら出汁の香りが鼻をくすぐる。そういえば、あの人は朝ごはんに味噌汁を作るのが好きだっけ。なんとなく、懐かしいことを思い出しながら、まだ眠いままの体でふらふらと起き上がる。
「おはよう、起きた?」
あの人がきみに声をかけた。きみはなんと答えるだろうか。しかし、名前を呼ぼうとしたところで、相手の名前が思い出せないことに気づく。何故か分からないが、顔もよく見えないのだ。
「まだ眠そうだね。朝ごはんはもう少し時間がかかるから、顔でも洗っておいで」
あの人は優しく微笑んだ。否、微笑んだと言っても、君がそう感じただけかもしれない。そうして、あの人は具材を刻んでいく。君はそんな姿を見て、またあの日と同じだと感じるだろうか。
洗面台に向かいながら、君は疑問について思考する。
はて、あの人は一体誰だったか。もやがかかったかの様に顔は見えないし、記憶が抜け落ちているかのように名前が思い出せない。
大切な人、ということだけは、よく覚えているんだけど。
君が洗面台から戻ってくると、お椀に味噌汁をよそっているあの人が目に入る。あの人は君が来たことに気がつくと、嬉しそうに話しかけた。
「おかえり。ちょうどご飯ができたところなんだ。一緒に食べようね」
懐かしい出汁の香り、フライパンから香るウインナーの匂い、蓋を開けばふわっと湧き上がる白米の湯気。そのどれもが、君の摂食中枢を刺激する。
あの人は朝ごはんを用意しながら、君にも手伝ってよと楽しそうに声をかけた。
「全く、見てるだけなんて酷いじゃない。働かざる者食うべからず、だよ」
全く困っていなさそうに笑うあの人をみて、君はどんな気持ちになるだろう。いずれにせよ、この光景は今よりもずっと昔だったころは、当たり前だったのだ。
だから、少なくとも、こんな幸せなひとときを、嫌だなんて思わないはずなのだ。
机には用意した朝ごはんが、2人分。左右対称に並べられて、箸に付けられるのを今か今かと待ちわびている。
「いただきます」
箸を手に取るまえに、手を合わせて感謝をする。そうして料理の望み通り、箸をつけてやるのだ。
「そういえば、PC。話しておかないといけないことがあるんだ」
あの人が、丁寧に食べながら君に話しかける。上品にお茶碗を利き手ではないほうで持って、柔らかに微笑む。
「君にずっと話しておきたいなと思って、いた事なんだけどね」
少し申し訳なさそうに、伏し目がちに喋る。ようやく、あの人の顔がはっきり見えてきた。靄がかかるのは朝だけだ。朝ごはんを食べているつもりだけど、もしかしたら今は昼なのかもしれないね。
「君のこと、本当に大切に思っているんだ」
「そう思っていたら、厄介なのに捕まってしまった」
「ごめんね、やっぱり、君には最後まで迷惑をかけてしまうんだけど」
あの人が、箸を置いた。どこか寂しげな表情。些細な動きひとつすら見逃さないくらい、鮮明に網膜に記憶させるような。
朝日が室内に舞う物質をキラキラと輝かせた。
君が喋らないなら、沈黙が続いた後、あの人は……いや、NPCは、立ち上がって君に近付いて、手を取る。
「お願いだ、魔法決闘をしてほしい」
「たった1回だけでいいんだ。ほんのすこし、弱い魔法でもいいから」
「お願い」
懇願する様に、君の手を自身の頬に近付けた。伝わる体温は生きている人のもの。暖かく、きっと抱きしめられたら二度寝してしまうだろう。
けれども、君はNPCのお願いを断る訳にはいかないのだ。それは、相手の態度からよく理解できる、かもしれない。
(任意のアクション魔法を発動する。所持していない場合はフレーバーで構わない)
心のどこかで、マナプロテクトがあるから、きっと大丈夫だ、なんて思っていたかもしれない。けれどその反対では、これで最後なんだろうと思っていたかもしれない。
別れなんてそんなものだよ。君の気持ちとは相反するんだ。心の準備なんて出来ないままに、すぐに消えてしまうんだよ。
7年も前から分かってたって、泣いちゃう子もいるくらいなんだから。
「泣かないでね、PC。もうこの姿で会えなくとも、また別の姿で巡り会えるから」
「その時はまた、愛してほしい。私も君を、見つけて、愛するから」
NPCは微笑んだ。君は確かに、NPCが持っていた発動体を射抜いたはずだった。けれど、魔法は貫通して、生身の体を傷つけた。
どくどくと血が溢れ出る。あの人の生きた証。君を愛した体を支えていた液体が、今、とめどなく流れ落ちる。
「大好き」
どんな物語のヒーローになっても、君はたった1人、NPCに愛された人間なのだ。忘れることはきっと出来ないだろう。いや、忘れないようにノートに書くのかな。人それぞれだろう。
最後に耳を触った4文字は、心地よく君を微睡みに誘い込んだ。
君は朝、目を覚ます。目覚まし時計が、今日は朝からの講義ということを教えてくれる。
おはよう、PC。ゆっくり話はできたかな?
神様がそう問いかけるように、寮室に添え付けられていた勉強机には一便の封筒が置かれていた。
宛先は君の名前、筆跡は愛しい人。
エンドA
「さようなら、ゆうべ夢をみたよ」
シナリオ終了。お疲れ様でした。
【シナリオ解説】
本シナリオでは、自立駆動の魔導具(コレクション)「レターオブソート」がこのような現象を引き起こしています。「レターオブソート」は大切な人に会いたいという思いに強く干渉するコレクションであり、本コレクションを枕の下に入れて眠ると、大切な人との日常を垣間見ることができます。以下、解説では「枕の下に「レターオブソート」がある状態で眠った人」=「使用者」として表記します。
ただ幸せな夢を見せるだけでなく、ちゃんと使用者本人の手で、大切な人と夢の中で別れなければいけません。これは、どれだけ使用者が抵抗したとしても、必ず起こる出来事です。たとえ本人にやる気が無かったとしても、コレクションの効果で魔法を発動させられます。だからこそ、戦闘データでアクション魔法(攻撃ができる魔法)を持っていなくても、NPCとの別れが可能となっています。また、夢の中のNPCはあくまでも「夢の中のNPC」、つまり「レターオブソート」が生み出した「PCが理想としているNPC」なので、例えばNPCが生きていても傷がつくようなことは一切発言しません。
夢から覚めることができれば、PCが「大切な人に言ってほしかった言葉」が大切な人の筆跡で綴られた手紙が残され、「レターオブソート」は姿をくらまします。また、「レターオブソート」はいままで多くの魔導次元に住まう人々に干渉してきましたが、特に大きな事件などには発展していないため、ハーベストや魔法省から問題視されていません。
このシナリオはハンバート ハンバート様の「おなじ話」をモチーフとして執筆しました。エンディングで流していただけると幸いです。
また、シナリオの最後にエンドAと描写していますが、本シナリオにはエンド分岐などはなく、ハッピーエンドしか用意しておりません。
本シナリオの描写は、基本的に二人称視点で(頑張って書いたつもりです)進行していますが、これはGMやPL、「レターオブソート」自体がPCに寄り添い、暖かく見守っているということを示唆しています。
適宜改変などをして、様々なPCで楽しんでくだされば嬉しいです。戦闘もありませんので、どなたでも回しやすいかとおもいます。
ぜひ沢山遊んでください。

