「魔法学園ファーメント」について
「魔法学園ファーメント」は面積約40万平方メートルの土地を有する7年制の私立魔法学園です。
後述するアビズマルゲートの監視のため、ゲートがある魔導次元の南東部に設立されました。一般的な魔法学園に比べ実習が多いことが特徴です。また、戦闘の実力を最重要視する傾向にあります。
生徒の総数は約3000人であり、そのうち7割ほどの生徒が寮生活を送っています。
ファーメントの歴史について
ファーメントは初め、「有事に備えるためにも、より実践的な魔法を学ぶべき」と考えたハーベストの生徒によって結成された学内組織でした。彼らは組織の理念を積極的なクリーチャーハントなどによって体現しており、卒業後にもファーメントの構成員を名乗り自主的にクリーチャーハントや後進指導を行っていた者もいました。
20世紀前半の「奈落の行進」をきっかけに、ファーメントは私立魔法学園として独立し、魔法学園ファーメントを名乗るようになりました。現在ではファーメントはハーベストと単位互換制度を有しているほか、在籍年数を引き継いで転校できたり、交換留学や交流行事が行われたりと密接な関係を築いており、事実上ハーベストの分校のような立ち位置を確立しています。
「奈落の行進」について
20世紀前半、現実世界で第一次世界大戦が起こっている中、魔法の存在を知っている一部の人間が現実世界に魔法を持ち込もうとしました。この動きにクリーチャーが目を付け、現実世界侵略に利用しようと考えます。両者は結託し、巨大な門「アビズマルゲート」を創造しました。これは一度に多くのクリーチャーが通れるだけでなく、新たにゲートを生み出す性質を持つ危険なものでした。
そして1917年、クリーチャーのカースで強化された現実世界の人間によってアビズマルゲートが開け放たれ、大量のクリーチャーが魔導次元に襲来しました。この事件を「奈落の行進」といいます。
奈落の行進は、クリーチャーだけでなく、暴走したカース感染者の対処も同時に行わなければならなかったため、魔界大戦のように少数精鋭で解決するのは不可能に思われました。
そのような状況の中で、ファーメントがその対処に名乗りを上げました。彼らは現代的な戦闘技術と魔法を組み合わせた戦法をとることでクリーチャー・カース感染者共々制圧し、ついにはアビズマルゲートの一時無力化にも成功しました。
ただし、アビズマルゲートの新たなゲートを生成する性質は現在まで失われていません。
この性質はファーメントが魔法学園として独立することになった一因でもあり、アビズマルゲートの周囲は現在までファーメントによって厳重に監視されています。
ファーメントの運営について
運営は学長が議長を務め、学科の主任講師10名が最終決定を下す評議会により行われています。
これは学長に権力が一点集中しないために設けられました。評議会に挙がる議題は全て彼らの多数決によって決められます。
敷地には、中央に管理棟、そこから等間隔に10の学科別の棟が存在します。このうち、植物魔導学科には幻想魔花研究室が併設されています。また、図書館、資料室、運動場、体育館と、学生会館、学生寮、購買所、講堂、食堂、プール、温室などの設備が点在しています。
敷地外の西側は全て「昏き渓谷」と呼ばれる幅広い谷が広がっています。昏き渓谷には過酷な環境で独自の進化を遂げたクリーチャーが多く存在しているため、一人で入るにはそれ相当の実力を求められます。また、最深部ではアビズマルゲートが今もなお新たなゲートを生みだしており、「アビスオブザーバー」である乾 琳を初めとする「特異ゲート監視委員会」がその監視に当たっています。
敷地外の東側は全て「眩き廃墟」と呼ばれる打ち捨てられた市街になっています。眩き廃墟は、町中に自生する発光植物によって光り輝いています。これはかつて住人が昏き渓谷で探索を行うために育てていたものです。この町は既存の町の真上に新たに町を作り発展しましたが、奈落の行進の魔力を間近で受けた結果、現在内部はダンジョンのような構造に変質しています。また、眩き廃墟では奈落の行進による影響で、時折価値があるオーパーツや貴金属が見つかることがあり、金策や調査の一環として訪れる人もいます。
昏き渓谷や眩き廃墟には、生徒たちも授業の一環や課題によって足を踏み入れることがあります。
また、学園内は現実世界の私立大学に近いですが、至る所に魔法による利便化が行われています。
特異ゲートについて
特異ゲートとはアビズマルゲートから発生したゲートの総称です。
特異ゲートは日に数個発生することがわかっています。さらに、およそ一ヶ月ほどの周期で「発生期」と呼ばれる期間が訪れ、数日間続く発生期の間に、アビズマルゲートから次々と特異ゲートが生み出されます。期間や生み出されるゲートの個数には幅がありますが、およそ1〜3日で発生期は収束し、この間に数十個~百個程度の特異ゲートが発生します。
特異ゲートは不安定な状態で発生しますが、時間が経過するにつれてクリーチャーが出現するゲートとして魔導次元に定着します。ファーメントの研究により、特異ゲートの安定化には魔界のクリーチャーが影響していることがわかってきました。
特異ゲートからクリーチャーが侵入しようとするとき、魔導次元が侵入者を退けようとする動きが生じます。この二つの力の衝突により、魔導次元に不完全な状態のクリーチャーが出現します。彼らは通常のクリーチャーとは違い、実体を持たず、心臓を破壊しても動き続けます。この不完全な状態のクリーチャーを通常のものと区別するため「虚像」と呼びます。
虚像が魔導次元に出現すると、特異ゲートにそのクリーチャーの生命力の一部が流れ込みます。これにより特異ゲートは魔導次元に定着していき、やがてクリーチャー本体が通れるようになります。
かつて特異ゲートの破壊が遅れた結果、そのゲートを通ってクリーチャーの一団が魔法学園ファーメントに襲来しました。特異ゲート監視委員会が総力を挙げて対応し、この事態は収拾されましたが、学園に少なくない被害を与えました。また、ファーメントではこの事件後に虚像の早期発見・撃破および特異ゲートの早期破壊が改めて周知徹底されました。
なお、ここで虚像の撃破が述べられているのは、虚像を撃破することでクリーチャーの生命力を削ることができ、特異ゲートの定着の進行を抑えることができるからです。クリーチャーの生命力が減少すると特異ゲートは再び不安定な状態に戻るため、簡単に破壊できるようになります。
特異ゲート監視委員会について
特異ゲート監視委員会は、特異ゲートの監視および後述する楔の保全活動を行っている組織です。
役職と活動内容に応じて組織内の肩書きを持っており、後方記録を担当する「ライブラリアン」と、現地調査やアビズマルゲートの封印措置の保守点検を担当する「パスファインダー」に分けられています。
また最高責任者である乾 琳は、大魔法で作成した楔をアビズマルゲートに打ち込むことで、そこを起点に「この場所にも自身の目と手の延長がある」と世界に誤認させ、元凶たるアビズマルゲートの監視と概念的な抑え込みを行っています。そのため彼は「アビスオブザーバー」という役職も持っています。
この抑え込み措置にも限界があるので、それらの管理および監視を強化する名目で「パスファインダー」が現地調査を行う必要があります。
特異ゲートの破壊のため、「発生期」が始まると特異ゲート監視委員会が主体となり、一般の有志生徒を募る形で対応を行います。情報共有などの都合で「パスファインダー」に所属している生徒がまとめ役となることが通例ですが、特異ゲートの数が多い場合などは信用できる一般生徒にその役割を任せることもあります。
なお、特異ゲートの破壊が間に合わなかった場合の最終手段を特異ゲート監視委員会は持っているという噂がファーメント内で流れていますが、その真偽のほどは不明です。
幻想魔花(アルラウネ)について
古来より、意志を持つ植物としてのクリーチャーは一定種類確認されてきましたが、「奈落の行進」以降、わずかではありますがカースを持つ植物と動物あるいはクリーチャーが融合した存在が確認されるようになってきました。当該存在はそのすべてがクリーチャーと同一の性質を示し、植物側はカースを持つものに限られるのに対し動物側がそうでないことから、植物側が当該存在の主となっていると考えられたため、「アルラウネ」という呼称がそれらの存在の総称として用いられました。
アルラウネに分類される植物の数は徐々にその数を増していき、アルラウネに関する研究が続けられる中で、1985年にある事件が起こりました。黒き森を歩いていたハーベストの生徒、藤原 恵理華が、カースを持つ植物に襲われ、融合してしまったのです。扱いについて意見が割れましたが、数日待たずに意識を取り戻し、以前と同じようなふるまいを見せたことから、監視の下で以前と同じ扱いが続けられました。
その後も、不定期に黒き森において同様に生徒がカースを持つ植物と融合する事例が続き、全員が他の動物のアルラウネと異なり人間的な振る舞いを見せたことから、呼び名は「アルラウネ」で慣例化していたものの、彼らを「幻想魔花」と表記し他のアルラウネとは区別することになりました。
幻想魔花とアルラウネの性質
幻想魔花の発見から数年後、幻想魔花を含むアルラウネの研究を行っていたカメリア・フローリスにより、通常のアルラウネは植物側が主となり活動するクリーチャーである一方、幻想魔花のマナの流れは他のアルラウネとはまったく異なることが実証されました。人間の発生させるヘヴンリィマナによる反発作用が影響していると考えられていますが、その理論の後押しになるデータはあるものの、いまだ証明には至っていません。
また、アルラウネを生み出す植物についての研究もおこなわれていますが、現在のところ他のクリーチャー等とは異なる性質を持った植物であること、外見が似た植物があることが多いもののその植物とは遺伝などの関連がなくまったく異なる発生源を持っていると考えられることが分かっているにとどまっています。これらの植物の自生箇所は黒き森や昏き渓谷であると考えられており、アルラウネの目撃数が多い地点も複数存在していますが、アルラウネが移動する性質上それが当該植物が多く発生した地点と一致しているかは不明です。
その植物はそれ自体が魔法の発動能力を持っており、その性質は幻想魔花となった人間と融合した物も例外ではありません。そのため、幻想魔花は同化した植物の力を活用することで発動体を用いずに魔法を使用することができますが、発動体優先効果が適用されず危険なため、通常の発動体を持つことが義務付けられています。
植物魔導学科の誕生
幻想魔花に関する種々の研究の副産物として、生きた植物を魔法の発動体とする技術が成立しました。実証実験を兼ねて、植物魔導学科がファーメントに設立され、発見者であるカメリアが主任として選ばれました。同時に、幻想魔花を中心にアルラウネについての研究を担う幻想魔花研究室が植物魔導学科に併設されました。
なお、この技術によって幻想魔花の同化した植物を始めとしたカースを持つ植物を発動体化する試みは現在のところ失敗に終わっています。幻想魔花の中には、藤原 恵理華をはじめとして、この技術によって同化した植物と似た姿の植物を発動体とし、区別がつきにくいように身に付ける人物も少なくありません。

